幸せな社会の仕組みへ 行政DXに不満と期待 ― 日経BP「暮らしに関するアンケート」調査より ―

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9月にデジタル庁が発足し、日本のデジタル化がいよいよ動き出す。この動きを行政内にとどめず、地方自治体や企業と連携しながらオールジャパンの取り組みに広げたい。デジタル活用の本質は、国民一人ひとりがより便利で安心・安全、快適に暮らせる社会づくりにある。改革の第一歩は国民の「本音」を知るところから。そこでここでは、行政機関のネットサービスに対する市民2000人超を対象とした調査結果から日本の行政DX(デジタルトランスフォーメーション)の現状を探った。

「暮らしに関するアンケート」概要

日経BPのICT(情報通信技術)領域のシンクタンクである日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボはインターネットを活用した行政手続きの利用実態を明らかにするために「暮らしに関するアンケート」を実施した。調査対象は15歳〜79歳の男女2065人、調査期間は2021年7月21日〜2021年7月23日。回答者の属性は男性49.4%、女性50.6%。年代別に見ると10代6.0%、20代12.4%、30代15.6%、40代18.5%、50代15.4%、60代18.1%、70代13.9%(四捨五入の関係で100にならない)だった。

日経BPのICT(情報通信技術)領域のシンクタンクである日経BP 総合研究所イノベーションICTラボはインターネットを活用した行政手続きの利用実態を明らかにするために「暮らしに関するアンケート」を実施した。同調査で10~70代の男女2000人超に対し、行政関連の手続きや申請にウェブサイトなどのネットサービスを使ったことがあるか尋ねたところ、使ったことが「ない」と答えた人は45.2%と、「ある」と答えた人(40.6%)を4.6ポイント上回った。半数近くの人は行政手続きに一度もネットを使ったことがなく、窓口に出向くなどしている実態がわかった。

行政関連のネットサービスを使ったことがある人に、操作性や使い勝手に不満があるか聞いてみた。その結果、不満が「ある」と答えた人は45.1%に上った。

ネットサービスの操作性に課題

不満があると答えた人に、具体的にどんな点が不満かを質問したところ、最多は「操作しにくい」だった。実に53.4%の人が挙げた。行政分野のネットサービスにおける最大の課題は、ユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)といった点にありそうだ。

自由意見には次のような声が寄せられた。「きちんと(登録などの操作が)できているか不安」(女性、45歳、東京都、会社員)。登録ボタンを押しても「登録が完了しました」といった画面が現れず元のままだったり、あるいは入力前のページに戻ってしまったりすることがある。登録完了を知らせる画面を設けたり、申請がどこまで進んだか利用者が確認できる仕組みを盛り込んだりしたいところだ。

行政ネットサービスに対する不満の2位以下は「IDやパスワードの管理が面倒」(46.0%)、「手続きごとにサイトがバラバラで不便」(40.5%)、「目的のサイトが探しにくい」(37.8%)、「情報が見にくい」(32.8%)と続いた。これら5大不満を踏まえると、UIやUXを改善し、様々な手続きを一元的に扱うポータルサイトのようなページを設け、目的別などの形で情報を整理する改善が求められそうだ。

日本経済新聞社と日経BPは、行政と企業が連携して日本全体のデジタル活用を促していく、いわゆる「デジタル立国」について議論する有識者会議を設けている。同会議で本調査について議論したところ、会議メンバーからは多様な意見・指摘があった。

例えば、行政ネットサービスについて、「不便を解消する」、すなわちマイナスをゼロにするというニーズが高く、デジタル化の取り組みを進める上で新たなイノベーションが必要不可欠だという話がでた。東京都の宮坂学副知事は「既存の仕組みの改善と新たなイノベーションの両方をバランスよく取り組む必要がある」とコメントした。また高度な行政サービスを求めるならば、国民による積極的な情報提供が前提であり、そうでなければ全体最適化されたより良い行政サービスは実現できない。ITコーディネータ協会の澁谷裕以会長は「ただ行政にこうしてほしい、こうなれば便利だと要望するだけでは、デジタル立国という言葉にあるような、国力を高める行政サービスのイノベーションは起きない」という意見を述べた。

各種申請を行う上で、国民本位のシステムへと変えていくことがポイントであるとの意見があった。例えば、いつでもどこでも証明書が発行できることを目指すのではなく、本来は証明書を求めない国へと変えていくべきではないかという指摘だ。日本と韓国の両方で行政に携わった経験を持つイーコーポレーションドットジェーピーの廉宗淳社長は「韓国では2014年から住民票をはじめ、ほとんどの証明書が自宅でプリント可能となっている。しかしセキュリティーのリスクを冒してまで証明書を求める理由はないという考えの下、証明書提出を不要にする法改正を行った。国民がアクセスする電子行政のホームページを一つに集約し、省庁や自治体の区別なく同じ操作で使えるようになっている」と紹介した。

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