変容とビジネス創出 経営視点で見直し

DXの真の狙いは業務オペレーションの改善にとどまらない、新規事業の創出やエコシステムの変革だ。DXに関する日米企業の取り組み状況について比較調査した電子情報技術産業協会(JEITA)ソリューションサービス事業委員会委員長の馬場俊介氏に調査の概要や、日本企業がDXで成功するためのカギなどについて聞いた。 本コラムは2021年3月17日日本経済新聞朝刊掲載 広告企画「2021年DXの本格的夜明け」を採録したものです。

目次

電子情報技術産業協会(JEITA)
ソリューションサービス事業委員会 委員長 馬場俊介氏

DよりX、その理由とは

日米比較で見えた課題

DXについて、経済産業省では「データとデジタル技術を活用し、顧客や社会のニーズをもとに、製品・サービス・ビジネスモデルを変革する」と定義しており、デジタル庁が狙う「これまでの文書や手続きの単なる電子化から脱却」なども含まれる。企業のDXでは「D=デジタル」よりも、「X=トランスフォーメーション、変容や新ビジネス創出」に重点がある。

しかし、我々が実施した調査で日本においては、業務オペレーションの改善など既存ビジネスの延長線でDXを捉えている姿が浮き彫りになった。

また、実施状況についての設問では全社・部門レベルを合わせると、米国企業は約3割、日本企業は約2割を実践中と回答した。2017年に実施した同種の調査と比較すると、日本企業は13.5 ポイント増と著しく伸長したものの、半数近くが「情報収集中」「取り組みをしていない」と回答しており、未着手の企業が目立つ。

経営者と話をすると、日本企業の経営者も「DXをやらなければならない」という意識は高い。ただ、米国企業の経営者は、まず「どうすれば我が社がアマゾンのようになれるだろうか」と間髪入れず足を踏み出す。

日本企業ではITと本業のビジネスの間がまだ遠く、デジタルネーティブではない企業が大半だ。一方、産業のあり方が大幅に変わった米国企業はITと一体化した経営をしている。MBAなど経営学の理論を学ぶよりも、デジタル技術を理解するために時間を費やすことが必要である。

注目している企業を1つ挙げると、経済産業省と東京証券取引所が選んだ「DX注目企業2020」の1社、流通業の丸井グループだ。トップ自らが、これまでの商品を仕入れ店舗で販売するビジネスから、モノを売らない売り場、「体験を売る」場への変革を推進し、さらに、オンラインとオフラインを融合するビジネスを目指している。

また、同社がオーナー経営を一貫しており、2期数年など短期間でトップが代わり、いわば単打を積み重ねざるを得ない経営と比べると長期的な戦略を練ることができるため、ドラスチックな企業文化の変革には優位であり、そこにもヒントがあるのではないかと考えている。

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