目的は一人ひとりの幸せ デジタル社会へ司令塔

目次

給付金 申請主義を脱却

―――具体的な施策やプロジェクトを聞かせてください。 我々は一人ひとりがニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会の実現に本気で取り組もうとしています。誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化のための手段として、様々なプロジェクトを立ち上げていこうと考えています。 1つはマイナンバーカードの普及を徹底的に加速させることです。運転免許証との一体化やスマートフォンへの機能搭載、民間との連携など、利便性も高めていきます。また、カードの発行能力も引き上げます。 申請主義からの脱却にも取り組みます。すでに子育て世帯生活支援特別給付金などでプッシュ型に近い形での給付をスタートしていますが、22年をめどに国のシステムを改修し、国民が口座を登録してくれていたら、経済対策や災害時対応の際に申請なくお金を渡せるようにしたいと思っています。これは長い申請主義の日本の行政システムの歴史の大転換点だと思います。 ―――マイナンバーカードはどんな役割を担いますか。 マイナンバーカードはデジタル社会の健全な発展のためには不可欠な要素です。デジタル化を進めれば進めるほど、本人確認が何よりも重要な基盤となり、遠隔でも確実な本人確認ができるという意味で、現時点で確かなのはやはりマイナンバーカードだと思っています。 10月から始まるマイナンバーカードを健康保険証として利用できる制度が分かりやすい例ですが、これから民間との連携で色々なものが便利になるはずです。 災害時にマイナンバーカードやカードを搭載したスマホだけを持って避難すればあとは困らないという仕組みもつくりたいと思っています。銀行口座からお金を引き出せるほか、罹災(りさい)証明書も取得でき、給付金などの支援も受けられる。さらに医療情報との連携で適切な医療も受けられるというイメージです。 ―――テクノロジー面ではどのような取り組みを考えていますか。 高齢者や障害者の方々がストレスを感じない、使い勝手の良いUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス) をつくります。スマホにマイナンバーカードの電子証明書機能を搭載できるようになるため、スマホで60秒以内に全ての手続きが完了できるという目標も掲げています。 丸投げ発注からの脱却も我々の大きな問題意識です。ワクチン接種記録システム(VRS)や接触確認アプリ、COCOA(ココア)もデジタル庁で運営をしていくことになりますが、デジタル庁でエンジニアを抱え、内製化できる部分は内製化していこうと考えています。 そのためにも、トップエンジニアが能力を最大限に発揮できるような組織にしたい。それには官民の連携というところが非常に重要で、フラットで風通しよく相互の信頼を前提に横断的に連携してプロジェクトを動かすことが我々の価値だと考えています。 ―――施策を実現するため、どんな組織を目指しますか。 組織文化をつくることが非常に大事で、自分たちのミッションは何かということを常に考えながら、しかも柔軟に取り組んでいく強い組織をつくっていきたいと思います。民間出身が約200人、官僚が300人という比率のため、お互いに強みが発揮できるように、走りながら最適化していこうと思っています。 これまでの役所文化では失敗を恐れるがために、様々なことに躊躇(ちゅうちょ)していましたが、デジタル庁はチャレンジを推奨し、失敗から学ぶことで、あえて最短距離に進みたい。デジタル分野では思った通りにいかなかったら、違うやり方にすぐ変えていく勇気が重要です。目標にするゴールは変えないけれども、プロセスに関しては柔軟にできる組織にしておかないと、かえって失敗する。誤解を恐れずに言えば、過度な完璧さを求めずに、スピード感を持ってアジャイル(迅速かつ柔軟)に成果を生むような仕事のやり方が根づけばいいと思っています。 ―――デジタル化の意義をどう考えますか。 デジタル化は手段であって、目的ではありません。目的にしているのは、多様な幸せが実現できる社会、そして、誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を進めたいということです。我々が生活して、泣いたり笑ったり幸せを実感している社会を、裏側で情報連携することにより、さらに居心地のいいもの、安全なもの、選択肢が増えるように変えていくのがデジタル庁の目指すデジタル化です。 災害対策にしても、高齢社会にしても、今回のパンデミックへの対応にしても、地方から人口が減っていく問題にしても、デジタルをツールとして考えれば、色々と打開策がある。社会問題を解決するために、今までのやり方を変えながら、デジタルの効果を最大限に発揮するのが目指すところになります。

スマホ・パソコンなくても

―――日本型のデジタル化として「デジ道」という言葉を掲げています。 デジタルの世界と人間が生活するアナログ空間をシームレスにつなぐためには、人が人を助ける社会を前提にする必要があります。困った人がいたら、できる人が助ける。スマホを持っていなくても、パソコンが使えなくてもデジタルの恩恵を受けられるようにしたい。困っている人がいたら助けるという日本が古来持っているコミュニティーの文化を進めるという意味で、道を開く・踏み外さないデジタル化、「デジ道」という言葉を村井純慶応義塾大学教授と2人でつくりました。 究極的には、デジタルを意識しないデジタル社会というものをこのデジ道でつくれれば、と考えています。 ―――最後に今後のデジタル社会の形成に向けた決意を示して頂けますか。 デジタル庁は現状のやり方を否定し、行政システムを国民目線でつくり変えようとしたところからスタートした組織のため、様々なあつれきがあるとは思います。象徴的に変わるものをつくらないと、なかなか理解されないので、身近に早く結果が出せるようなものをフラッグシップのプロジェクトとして先行させたいと思っています。 それがワクチン接種になるのか、給付金になるのか。そこはこれから議論します。一方、国のシステムの最適化などはすぐに結果をフィードバックできないので、中長期的なものと、短期的に国民が熱狂的に支持してくれるようなプロジェクトを組み合わせて進めたいと思います。

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