民間から精鋭 縦割り打破/感じようデジタルの日

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9月1日、デジタル社会形成の司令塔となるデジタル庁が始動した。新たな組織が取り組むのは「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」(平井卓也デジタル大臣、肩書は当時)の推進だ。大胆なデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて、構造改革の先頭に立ち、すべての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会の実現を目指す。

目的は一人一人の幸せ デジタル社会へ司令塔 〜デジタル庁発足 DX前へ①〜 を読む
民間から精鋭 縦割り打破/感じようデジタルの日〜デジタル庁発足 DX前へ②〜 を読む
カギ握るマイナカード/企業、問われる継続力 〜デジタル庁発足 DX前へ③〜 を読む

民間から精鋭 縦割り打破

デジタル庁の発足には民間からの人材登用や情報システム予算の一元化など新たな取り組みが求められた。設立まで内閣官房でその準備に当たってきたデジタル庁企画官の津脇慈子氏にMM総研所長の関口和一氏が聞いた。

対談

デジタル庁企画官 津脇慈子氏

つわき・よしこ 2004年東大卒。同年経済産業省入省。10年から米コロンビア大、英ケンブリッジ大に留学。商務サービスグループ政策企画委員、キャッシュレス推進室長、大臣官房企画官、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室企画官などを経て現職

聞き手 MM総研代表取締役所長 関口和一氏

国のシステム予算 一括計上

関口設立準備で大変忙しかったと思いますが。 津脇民間からも人材を登用し、国民目線で新たな行政サービスをつくるという点で今までにない制度づくりをしました。従来なら課や室をまず設けますが、今回は目的ごとにプロジェクト制を導入します。ソーシャルメディアを活用したり、官民のメンバーが気軽に情報交換できる仕組みなども採用しています。 関口そもそもデジタル庁はなぜ必要なのでしょうか。 津脇コロナ禍で十分な行政サービスを提供できなかったという反省が根底にあると思います。政府や地方自治体の情報システムがバラバラで、官主導で進めてきたデジタル化が十分機能しなかったわけです。 内閣官房にあった情報通信技術(IT)総合戦略室や政府CIO(最高情報責任者)補佐官といった制度は省庁間の調整機能が主で、省庁の縦割りの形は残ったままでした。デジタル庁は各省庁に対する勧告権を持ち、システム予算も一括計上するなど強力な組織に衣替えしました。デジタル庁自らがシステム構築に携わることも特徴です。 関口民間から人材を募った理由は何でしょうか。 津脇政府の情報システムはこれまで、事前にきっちり固めた要件定義をもとに民間企業に外注することが多く、内部に十分なデジタル人材がいないことから、使い勝手がよくないサービスができたり、時間やコストがかかるなどの課題がありました。 平井卓也デジタル大臣は「スマートフォンで60秒でできる行政のワンストップサービスを実現したい」と話していますが、そのためには最新技術がわかるデジタル人材を政府の内部に抱えておくことが重要です。 関口デジタル庁は具体的に何に取り組むのですか。 津脇例えば情報を大規模に処理するクラウド技術などが登場したことで、バラバラにシステム構築するより共通の情報基盤をつくり、その上に様々な行政サービスのアプリケーションを構築していく方が、低コストでスピーディーによりよいサービスを提供でき、望ましいといえます。民間のIT企業とも連携して、その共通基盤をつくるのがデジタル庁の仕事です。 例えば公的機関で扱われる法人や土地・建物などの基本データベースを「ベースレジストリ」と呼んでいますが、これまでは各省庁や各自治体が独自の仕様でバラバラにデータを管理してきました。そうしたデータを標準化、連携することで行政のワンストップサービスは大きく進みます。 関口コロナ禍では政府と地方自治体がつながっていないことも指摘されました。 津脇地方ごとにそれぞれ状況が違いますので、政府がシステムを中央から押し付けることは考えていません。ただ、自治体の規模によっては自前では構築できない場合もあります。クラウド技術などによって共通化した方がいい部分もあるでしょう。 この春、ソーシャルメディアなどを活用し、政府と自治体の職員が政策の方向性を固める前に直接対話できる「デジタル改革共創プラットフォーム」という仕組みを立ち上げました。 特に住民基本台帳や固定資産税といった自治体が共通に行う17業務についてはプロセスを見直し、標準化できるところは標準化していくことが重要です。これにより浮いたコストや時間を、別の住民サービスに振り向けていくこともできます。 関口医療や教育分野のデジタル化も重要な課題です。 津脇デジタル庁は政府や自治体のシステム構築を担うと同時に、国全体のデジタル化を促す司令塔としての役割もあります。医療や健康、教育、防災といった分野では、それぞれ所管の省庁と協力し、デジタル化がスムーズに進むよう促していきます。 関口平井デジタル相はマイナンバーが重要と話していますね。 津脇デジタル庁は政府や自治体のシステム構築を担うと同時に、国全体のデジタル化を促す司令塔としての役割もあります。医療や健康、教育、防災といった分野では、それぞれ所管の省庁と協力し、デジタル化がスムーズに進むよう促していきます。

改革の志高く 戦略的に

関口手本とした海外の政府組織はありますか。 津脇平井デジタル大臣がよく例に挙げる北欧のエストニアでは国民の98%に国民IDが普及し、様々な行政サービスが効率よく提供されています。国により事情が異なるため一概に比較できませんが、デジタル庁は様々な海外の例を参考にして構築しました。 関口民間から人材を募るには課題もあったのでは? 津脇職員は全体で600人程度、うち民間からは非常勤も入れて約200人います。優秀な人材を獲得するため、一般の国家公務員とは異なる報酬体系を用意したり、兼業やリモートワークなど多様な働き方ができるようにしています。 驚いたのは、応募してくれた人の多くが、日本の現状への危機意識が強く、志がとても高いことです。「少しでも自分が貢献できれば」「この機会に日本を変えたい、よくしたい」という明確な思いを持って参画してくれています。 関口デジタル庁の設立を掲げた菅義偉首相からはどんなメッセージを受け取っていますか。 津脇コロナ禍の反省を踏まえて縦割りを打破し、デジタル化を推進する司令塔になることが求められていると思います。新体制の発足で政府CIO制度はなくなり、デジタル庁のトップは首相が務めます。それを補佐、統括するのがデジタル大臣で、次官に相当する事務方のトップがデジタル監です。 人材の獲得に加えて重要なのが調達改革です。システムの性質に応じて、例えば「アジャイル」方式など柔軟で適切な開発手法を選べるように、従来の調達の在り方を見直します。メンテナンスに偏った情報システム投資を、より戦略的なものに変えていくことが必要だと思います。

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