カギ握るマイナカード/企業、問われる継続力

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9月1日、デジタル社会形成の司令塔となるデジタル庁が始動した。新たな組織が取り組むのは「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」(平井卓也デジタル大臣、肩書は当時)の推進だ。大胆なデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて、構造改革の先頭に立ち、すべての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会の実現を目指す。

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カギ握るマイナカード

行政のDXを進める上で、マイナンバーカード(マイナカード)の普及、利用促進が欠かせない。2022年度中にほぼ全住民のマイナカード取得を目指し、どのような施策を打っていくのか。鍵を握るのは利便性の向上。そこでデジタル庁では「国民が所有メリットを感じられるように、徹底的に提供サービスを磨いていく」(デジタル庁の浅岡孝充参事官)考えだ。

3人に1人以上が保有

20年はマイナカードに注目の集まった年だった。5月に始まった「特別定額給付金」、9月に始まった「マイナポイント」と、マイナカードを所持するメリットが拡大し、取得する人が急増したからだ。20年4月1日時点のマイナカードの交付枚数は2033万枚で、人口に対する交付枚数率は16・0%にとどまっていた。しかし8月30日現在で交付枚数は4750万枚で人口に対する交付率は37・5%と、国民の3人に1人以上は持っている状況となっている。

マイナンバー(個人番号)は国民一人ひとりに割り振られた12桁の数字で、行政機関において社会保障や税の個人情報と結びついて個人を識別する番号。国民にとって利便性の高い公平・公正なデジタル社会を構築する上で欠かせないものだ。また、マイナカードの活用によって、確実な本人確認ができ、国や地方自治体が保有する様々な情報へのアクセスやその活用も可能になる。政府が本人であることの真正性を担保したICカードを無料で発行し、その活用まで踏み込んで運用を行っている例は世界でもほとんどない。

従来住民票や所得証明書など、紙の書類を添付しなければいけなかった行政手続きにおいて、マイナンバーによる情報連携で書類添付が不要となり、行政サービスの効率化はもちろん、国民にとって手続きのスピードアップにつながっている。「今後は行政側からプッシュ型で給付などの手続きができるように整備を進めている」(浅岡氏)ところだ。

証明証などの一体化進む

これまでマイナカードは顔写真付きの本人確認手段というイメージが強かった。しかしカード保有者が増えたことで、例えば今回のコロナワクチン接種で「手続きの簡素化に活用できないのか」といった声が多数寄せられたという。デジタル庁ではデジタル社会のパスポートとして、その活用範囲を広げ、利便性を一段と高めていく方針だ。

まず、今秋には医療機関や薬局の受付でマイナカードをカードリーダーにかざすことで、「健康保険証」として利用可能になる。自分の医療情報がマイナポータルで確認できることや医療費控除の手続きも簡便になる。また加入する保険者が変わっても、新しい保険証の発行を待たずに、受診可能になる。さらに24年度末までには「運転免許証」との一体化も開始される予定だ。計画段階では、免許更新時の書類提出や講習受講のオンライン化も検討されているという。母子手帳や障害者手帳、国家資格証などとの一体化も行われる予定だ。

マイナカードをスマートフォンに搭載するための検討も進んでいる。22年度中の実現に向け、まずはAndroid端末を対象とした開発が行われている。マイナカードがスマホに搭載されることで、身分証明書が必要であったり、役所の窓口に出向かなければいけなかった手続きが、スマホ端末だけで完結できるようになる。政府は「スマホ1つで本人確認ができる社会を実現し、あらゆる行政手続きを60秒以内で完了できる時代を目指している」(浅岡氏)のだ。

「誰もが恩恵」サービス磨く

マイナンバーやマイナカードの活用領域が拡大することで、セキュリティー対応など、取り扱いには細心の注意が必要になる。一方で安全性を重視するあまり、利便性を失っては意味がない。実際、マイナンバーもマイナカードもツールにすぎない。浅岡氏も「安心・安全で人に優しいデジタル社会の基盤をつくることが最も重要」と話す。

デジタル庁はその推進役として、強力な司令塔機能を持つ。DXとはIT(情報技術)の活用で、人々の生活をよりよいものに変革することだ。デジタル庁が行政のDXをリードし、誰もがデジタルの恩恵を実感できる仕組みの構築を、まずはマイナンバーとマイナカードで実現されることを期待したい。

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