カギ握るマイナカード/企業、問われる継続力

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企業、問われる継続力

DXが注目されて数年が経過し、多くの企業がDXへの取り組みを推進している。しかし、華々しく成功を収める企業が現れる一方、足踏みし停滞する企業も多く、DX推進の二極化が起きている。何がDX推進を妨げているのか、どうすれば前に進めることができるのか。DX推進のポイントを考える。

組織風土・IT環境 刷新を

インターネットの登場により急速に進むデジタル化は、社会や経済を激変させた。デジタル社会ではあらゆる情報がデジタルデータとして補捉され、人やモノがつながり合い、バーチャルな空間や体験が生まれる。

こうしたデジタル化のもたらす価値に注目し大成功を収めたのが、米グーグルなど「GAFA」に代表されるデジタルネーティブ企業だ。これまでとは全く違うビジネスモデルで従来の業界構造や商習慣に風穴を開け、既存企業を脅かす存在となった。もはやデジタル化への対応は、企業の存続を左右すると言っても過言ではなく、日本企業もDXに積極的に取り組み始めている。

しかし、その進展は必ずしも順風満帆ではないようだ。「DXが遅々として進まない」「一旦業務やビジネスをDXしても持続せず、元の状態に戻ってしまう」といった声も多く聞く。

経済産業省と東京証券取引所が実施する「DX銘柄制度」の選定委員であり、「未来ビジネス図解 新しいDX戦略」の著者であるITRの内山悟志会長は、「DXを円滑に進めるには全体像を上下部の二段構えで捉えるとよい」と助言する。(図参照)

DXの実践にはデジタル技術やデータを活用して既存事業や業務を高度化していく漸進型と、次代のビジネスを創出する不連続型があり、これらを両輪として進めていくことがポイントになる。しかし上部だけを進めようとしてもうまくはいかない。なぜなら、下部の企業内変革や組織カルチャー、IT環境の再整備といったDX推進の環境が整っていないからだ。

「例えば、コロナ禍で日本企業のテレワークは一気に活用が進んだように見える。しかしテレビ会議システムを用意しただけの表面的なリモートワークではDXとは言えない。組織の在り方、人事評価や就業管理といった社内の各種制度、組織カルチャーも一緒に変えていかないと一過性のもので終わってしまう」(内山氏)

DXは一度きりのものではない。ビジネス環境は変化し続け、技術革新も止まることはない。DX環境をしっかり整備した上で、漸進型イノベーションと不連続型イノベーションを繰り出し続けられる体制をつくることが重要なのだ。

デジタルがすべての前提

経済産業省は、2018年に発表した「DXを推進するためのガイドライン」で、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義。技術はあくまでも手段であり、先進的なデジタル技術を活用することが目的ではない。実際DXの成功事例を見ると、見せ方や料金体系、提供方法を少し変えるといった工夫から成り立っているものが非常に多い。

「わかりやすいのはシェアリングエコノミーやマッチングビジネス。これらは基本的にスマホ、インターネット、データベース、検索の4つで成立している。DXの推進で必要なのは、自社がどんな世界を実現したいのかという発想だ。将来視点でどのような課題を解決し、どんな価値を創出するのかが重要なのであって、最先端のテクノロジーは必須ではない」(内山氏)

成功例として有名な建設機械メーカーのソリューションサービスも、そもそもは海外で盗まれたり、故障したまま放置されたりする建設機械を探すため、全地球測位システム(GPS)をつけたことから始まった。その後、建設現場の人手不足解消のための建設機械の自動化など、お客様の課題に応える形を積み重ねることで、現在の事業に育て上げている。また大手百貨店ではコロナ禍による非対面・非接触ニーズの高まりによるリモートショッピングアプリの開発を受け、仮想現実(VR)上で自分のアバターを操作して仮想空間にあるバーチャル店舗で買い物をするという新しい体験を提供している。いずれも「どんな世界を実現するのか」という発想から生まれた成功例だ。

「DXの推進には、社員が自由闊達(かったつ)に議論でき、ゼロベースの発想を生み出せる環境が不可欠。そんな組織カルチャーをつくることが重要だ」と内山氏は強調する。

では、今後DXはどう進展していくのか。内山氏は社会のデジタル化がより進展していくにしたがって、DXの本質も変わっていくと予想する。「デジタルはDXの『手段』という位置付けから『前提』になるだろう。ビジネスモデル、顧客との接点、意思決定や組織カルチャーなど、すべてがデジタルを前提として組み立てられていく。その意味で『デジタルに適合する企業に丸々生まれ変わる』ことこそが、DXの定義になろうとしている」(内山氏)

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