国の構造を変える「デジタル原則」に 〜DXデジタル庁4カ月〜

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デジタル庁が発足して約4カ月が経過した。コロナ禍で明らかになったわが国のデジタル化の遅れを取り戻すため、デジタル技術の活用を前提に、規制改革、行政改革と一体化した仕組みづくりが進む。キーワードは「デジタル原則」。本質的な構造改革に向け、その推進役である牧島かれんデジタル相に話を聞いた。

インタビュー

デジタル相  牧島 かれん氏

(まきしま・かれん)2000年国際基督教大学卒。01年米・ジョージワシントン大学ポリティカル・マネージメント大学院修了。08年国際基督教大学大学院行政学研究科博士課程修了。12年衆院選初当選。当選4回。15年内閣府大臣政務官、20年自民党青年局長などを経て、21年10月にデジタル・行政改革・規制改革担当相に就任。45歳。

規制改革、行政改革と一体推進

―――岸田内閣が推進するデジタル改革について、その狙いや内容を教えてください。 岸田首相は新しい時代を開拓するため、デジタル改革、規制改革、行政改革を一体的に進めることを掲げました。そこで「デジタル田園都市国家構想実現会議」と「デジタル臨時行政調査会(デジタル臨調)」という2つの大きなデジタルに関する会議を立ち上げ、それらを車の両輪とし、社会全体のデジタル化を強力に推進していくことを示しました。私はそれを一体的に進める任務を拝命し、大変光栄であると同時に、その重責をしっかりと果たしていかなければいけないと考えています。 デジタル田園都市国家構想とは、地方におけるデジタルインフラの整備やデジタル社会実装を進め、「大都市の利便性」と「地域の豊かさ」を融合したデジタル田園都市を構築し、「心ゆたかな暮らし(ウェルビーイング)」と「持続可能な環境・社会・経済(サステナビリティー)」を実現することであり、岸田首相が掲げる成長戦略の柱の一つでもあります。すべての国民が望む場所で望む生活の質を得られるように、デジタルで環境を整えていくことが目的です。 社会全体のデジタル化の推進では、具体的には、行政のデジタル化の強力な推進によるデジタルガバメントの確立。マイナンバーカードの普及・利活用、およびマイナンバー制度のさらなる拡充。ベース・レジストリ(※)の整備と利活用。デジタル人材の育成やサイバーセキュリティー対策、デジタルデバイド対策。さらに、わが国が提唱したDFFT(信頼ある自由なデータ流通)の基本的考え方や理念を共有する国々と連携を図って包括的データ戦略を推進することなども重要なテーマとなっています。 ―――デジタル臨調は何をするのですか。 デジタル社会を形成していく上で、わが国の「制度」「組織」「人材」がデジタル技術を最大限に活用できる仕組みとなっていません。そこでボトルネックとなっている課題を徹底的に洗い出し、デジタル改革、規制改革、行政改革を一体的に推し進めるのがデジタル臨調の役目です。年内には共通的指針となる「デジタル原則」を取りまとめます。先日デジタル庁内に事務局準備室を設置しました。各府省庁、弁護士やスタートアップ企業の方など、様々な分野の有識者に集まってもらい検討を行っています。 ―――デジタル原則とはどのようなことでしょうか。 例えば、トンネルや橋梁の点検の多くは人が目視で確認作業を行っています。非常に大変な作業であり、多くの人手が必要です。こうした作業はドローンなどのデジタル技術を活用すれば、既に目視でなくても可能となっています。そこで、テクノロジーの進化に合っていない法律、規制、慣習などを点検し、何を目的にしたルールなのか、またどういったリスクに対する規制なのかなど、ゴールベースとリスクベースで考えて、新たな仕組みをデジタル前提で構築することが必要です。人口減少社会であるわが国において、人手不足は大きな課題であり、コロナ禍の中でリモートワークなどの働き方の多様性も広がっています。デジタル臨調ではあらゆる産業を対象に、多様な働き方に合致した形でデジタル原則の総点検を行っていきます。つまりデジタル臨調ではデジタル原則で規制や制度の見直しを図り、その上でデジタル田園都市というものを国家構想としてつくっていくことになります。

利便性向上へ マイナンバーカード

―――デジタル庁の役割は。 デジタル庁は今年9月に社会全体のデジタル化を推進し、早期に国民にデジタル改革の恩恵を届けることを目的に発足しました。各府省庁への勧告権など強力な総合調整機能を持ち、民間人材も多数採用するなど、これまでの霞が関にはない新しい組織、まさにスタートアップです。試行錯誤しながら、様々なバックグラウンドを生かして、働き方そのものも変革する。ロールモデル的な役割も果たしていきたいと思っています。 ―――電子政府の基盤となるガバメントクラウドの事業者が決まりましたね。 アマゾン・ウェブ・サービスとグーグル・クラウド・プラットフォームの2事業者と契約することになりました。まず地方自治体の先行事業やデジタル庁のウェブサイトの移行を進め、17の基幹業務については2025年度末までに移行します。全国約1700の自治体が様々なシステムで運用してきたものを、同じ機能は共有することで無駄のない効率的なリソースの活用ができると考えています。 ―――マイナンバーカードの普及・利活用も進んでいますね。 11月に交付済み発行数が5000万枚を超え、12月には普及率は4割に達しました。22年度末までにすべての国民に持ってもらえるように、さらなる利便性の向上を図っていきます。目標の一つであったマイナンバーカードと健康保険証の一体化が実現し、10月からはオンラインによる資格確認の本格的な運用が始まりました。マイナポータルで、医療保険の薬剤情報や特定健診の情報、後期高齢者の健診情報などが閲覧できます。例えば自分の飲んでいる薬が何か、正確に分かることや、健康づくりに特定健診の結果が活用できるなど、生活に便利な使い方の範囲が広がっています。先日私も自分の情報にアクセスしてみました。最近は医療機関にかかっていないと思っていましたが、歯科の診療情報が出てきて、歯医者に行かなければいけないことを思い出しました。11月からはマイナポータルで医療保険の医療費通知情報の閲覧も可能となり、e-Taxと連携させることで、確定申告の医療費控除に利用できるようになりました。 ―――国民目線に立ったサービスの充実が求められています。 先日、運転免許証の更新手続きに行きました。その際、名前、住所、電話番号、生年月日を書類に記入しなければいけませんでした。すべてマイナンバーカードに入っている情報です。こうした無駄を省き、いわゆるお役所仕事を抜本的に変えないといけません。マイナンバーカードとマイナポータルは、デジタル社会における様々な行政サービスの基盤です。今後、積極的かつ迅速に利便性の向上を進めていきます。例えば、マイナンバーカードと運転免許証の一体化は、警察庁と協力し、当初より早く24年度末から実施できるように進めています。また公金受取口座の登録も来年には行えるように検討を進めているところです。コロナ禍で浮き彫りとなったデジタル化の遅れを取り戻すことはもちろん、申請主義からプッシュ型の行政サービスの提供へと国民ニーズが高まってきていると感じているので対応を急ぎます。

「デジタルの日」にマイナンバーカードを健康保険証として利用する実演に参加する牧島デジタル相(10月、東京・港区の虎の門病院)

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