国の構造を変える「デジタル原則」に 〜DXデジタル庁4カ月〜

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ワクチン接種の電子証明に挑戦

―――10月10日&11日に「デジタルの日」を実施しました。 700以上の民間企業・団体の賛同を得ることができ、今年のテーマである「#デジタルを贈ろう」に関連した様々な取り組みが行われました。デジタル庁として、「日本のデジタル度」について語り合うトークセッションや、「デジタル社会推進賞」の受賞者の発表などをオンラインで配信。デジタル庁公式のYouTube、Twitterの視聴数は延べ250万回を数えました。マイナンバーカードの健康保険証利用のデモンストレーションも東京・港区の虎の門病院で実施しました。今後もデジタルの日が「社会全体でデジタルについて定期的に振り返り、体験し、見直す機会」となるよう、今回の経験を生かして継続します。来年以降は10月をデジタル月間とし、10月の第1日曜日と月曜日の2日間にデジタルの日を実施します。 ―――ところで、先般IMDが発表したデジタル競争力のランキングで、わが国が昨年から1つ順位を落として64カ国中の28位となりました。 大変な危機感を持っています。順位が伸び悩むだけでなく、下がった現状をしっかりと認識し、国際的に通用するデジタル社会を早期に実現していかなければいけません。その実現に向け、このたび国連が実施する電子政府調査で2回連続トップとなったデンマーク王国と、デジタル分野における協力の覚書(MOC)を締結しました。DFFTの相互協力をはじめ、セミナーの開催や人材交流などを行います。デジタルID認証システムや市民向けポータルなどの先進ノウハウを学びたいと考えています。 ―――22年に向け、デジタル変革をどう舵(かじ)取りしていくか。抱負を。 デジタル変革へのアプローチの仕方はいろいろありますが、私は「No one left behind(誰一人取り残されない)」が最も重要だと考えています。その実現に必要なサービスをつくり、提供していくのがデジタル庁の役割です。スタートアップマインドを持ち、短期間で検証や改善を繰り返すアジャイルな推進を実行できる役所として、積極的にチャレンジしていきます。具体的な取り組みの一つとして、コロナワクチンの接種記録の証明書をスマートフォンに表示できるアプリをリリースしました。 地方自治体との連携を強めると同時に、健康、医療、教育、防災などの準公共分野でもデジタル化を推進し、国民の皆さんがデジタルの利便性、恩恵を感じられる場面を増やしていくことが、22年の我々のミッションです。アイデアボックス(https://polipoli-gov.com/)には、若い人も含め、幅広い層からたくさんの意見が寄せられています。国民目線を大切にして、社会全体のデジタル化を推し進めていきます。

顧客に価値提供、有力な手法

東京大学名誉教授 学習院大学国際社会科学部教授 伊藤元重氏

(いとう・もとしげ)1974年東京大学経済学部経済学科卒。78 年米・ロチェスター大学大学院経済学部博士課程修了。79年経済学博士号取得。93年東京大学経済学部教授、2007年同大学大学院経済学研究科・研究科を経て、16 年に同大学名誉教授、学習院大学国際社会科学部教授に就任。69歳。

デジタル技術の革新のスピードは加速化している。技術の変化のスピードもさることながら、より重要なことはデジタル関連のビジネスに資金が集中していることだ。GAFAの時価総額が日本の上場企業の全価値よりも高くなっていることがそれを象徴している。そしてさらに重要なことは、優秀な人材がデジタル関連分野に集まっていることだ。金と人が集まるデジタル分野が経済の変化の原動力である。多くの企業にとってデジタルトランスフォーメーション(DX)にどう取り組むのかが今後の成長の鍵となる。デジタル技術は手段に過ぎない。何をしたいのかがまずあり、それにデジタル技術をどう活用するのかという姿勢が重要だ。技術的なシーズが先ではない。ビジネス上のニーズが先行する。

人手不足の問題を例に取り上げよう。日本の多くの企業が直面する課題だ。日本中の企業が同じ条件にあるので、旧来からある手法で人手不足に対応することは困難だ。新たに手法を活用する必要がある。デジタル技術がそれだ。スマホの活用、クラウドサービス、AI(人工知能)など、低コストで簡便に利用できるサービスが増えている。中小企業でもこうした手法を積極的に取り入れて、人手不足に対応することができるはずだ。そうした対応を通じてビジネスのDXを進めることができる。

ビジネスのニーズは様々である。そうした中で、多くの企業がビジネスのニーズとして最上位に掲げるべきことが、顧客により高い価値を提供するということだ。商品やサービスの提供はあくまでも手段であり、その結果顧客にどのような価値が提供できるのかが問われる。高い価値を提供できれば、利益を削るような価格競争に巻き込まれることもないだろうし、顧客との長期的な関係を築くこともできる。

顧客に提供することのできる価値は多様だ。例えば顧客が人材不足に悩む建設業者であれば、デジタルを駆使したスマート建機で顧客の人手不足を解消することができるかもしれない。顧客が信頼性の高い部品のメンテナンスに関心があれば、センサーを部品につけることでより高い品質管理を可能にできるかもしれない。サブスクリプション型のビジネスモデルの利点は、顧客の利用状況や嗜好がリアルタイムで入ってくることで、顧客により高い価値を提案できることにある。ビジネスのニーズがどこにあるのかが明確になっていれば、デジタル技術はその価値の実現を支援する有力な手法となるはずだ。

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