【前編】変革の推進役育成を 組織・文化の醸成も鍵 〜DX人材フォーラム〜

目次

デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む日本企業が増える中、その成否の鍵は人材だ。データの重要性を理解し、適切にデジタル技術と組み合わせて、企業変革に主体的に取り組むことができるDX人材のニーズが一段と高まっている。しかし、その育成・確保は簡単ではない。そこで日本経済新聞社は「DX人材フォーラム」を開催。「DX実現に必要な人と組織の変革」をテーマに、専門家が最新の取り組み状況や対応策を紹介した。デジタルリテラシーの向上だけでなく、時代に合った組織・文化の醸成と、それを推進する人材育成の重要性について話し合われた。

基調講演「リテラシー向上は可能 競争力生む源泉」

(左)デジタルリテラシー協議会 協議委員 データサイエンティスト協会 代表理事 草野 隆史氏
(右)東京大学大学院工学系研究科 教授 日本ディープラーニング協会 理事長 デジタルリテラシー協議会 協議委員 松尾 豊氏

草野Society5.0を担う人材育成の重要性が喧伝(けんでん)される中、DXの本質をどう捉えているか。 松尾物事を進めるスピードのアップ、あるいはサイクルの高速化に帰着するのではないか。PDCAを回す、業務改善を進める、顧客ニーズを発見するなど、いろんなレベルのサイクルがあるが、人工知能(AI)などのデジタル技術を活用して早くする。早さが競争力を生み出す。 草野1995年にインターネットの本格的な普及が始まり、顧客との接点となることで、IT(情報技術)活用が企業の差別化要因になった。そしていまデジタル前提の時代となり、デジタル技術を活用したビジネスや業務の変革が差別化のポイント。例えていえば、デジタル化は感覚神経による感知であり、そこで得たデータを使って行動を起こす運動神経活用の仕組みが競争力の源泉になる。 松尾日本を元気にする、変えようと思ったら、デジタルとスタートアップしかない。日本全体のデジタルリテラシーを上げる必要がある。 草野デジタルリテラシーを学ぶべき対象は誰か。 松尾基本的にすべての人だ。いまデジタル化の影響を受けない世界に生きる人はいない。だから企業活動の中でデジタルを使って変革を起こしていくことが重要で、デジタルリテラシーは不可欠だ。 草野確かにデジタルを上手に使えるかどうかで生産性は大きく違ってくる。デジタルリテラシーなくして、企業競争力は生まれない。またデジタルリテラシーがあれば、事業をどう変革できるかという発想にもつながる。経営者がデジタルを自分事化して、自分の言葉で発信できるレベルになることも大切だ。 松尾同感だ。経営者が理解すれば、圧倒的に強くなれる。 草野デジタル人材育成はどう進めればいいか。 松尾確かにプログラミングまで理解できる人材は少ない。しかしスキル習得の素質を持つ人はたくさんいるし、やる気と熱意を持って取り組めば、成長は速い。とにかく使うことから始めて徐々にレベルを上げていくことだ。 草野日本がデジタル化で世界から遅れたのは事実。だからこそ経営者から従業員まで、全員が学ぼうという感覚で取り組み、デジタルの裾野を広げていくしかない。 松尾本当にラストチャンス。この機会に日本全体で変わっていかなければだめだ。それに必要なデジタルリテラシー習得を支援していく。

デジタルIT人材を育成

大和証券グループ本社 執行役社長CEO 中田 誠司氏

デジタルIT人材の社内育成策を進めている背景は、将来を予測しづらいVUCA(変動・不確実・複雑・曖昧)の時代といわれる中、デジタルIT人材がいきいきと活躍できる企業に変われれば、無数のビジネス機会を得られるからだ。

大和証券では全社員9000人を対象に、デジタルリテラシーの底上げに重点を置いた研修を実施。さらに部門別にはより高いレベルの研修で専門スキルの向上を図る。高度人材の育成を目的に立ち上げた「デジタルITマスター認定制度」を中心に、デジタルIT人材200人の育成を目指す。プログラミング言語「Python3エンジニア認定基礎試験」合格者1000人以上という目標も掲げ、既に700人が合格した。役職者を対象にデジタルマインド研修も行っており、私自身も研修に参加している。

デジタルIT人材像として、案件の企画から推進まで円滑に対応できるDX推進人材と、データ分析を迅速かつ確実に推進できるAI・データサイエンス人材という2つを描いている。この2つの人材が、ビジネス変革を加速させる。ただし、変革は人材育成だけでは実現しない。文化の醸成が不可欠であり、DX推進を使命とする専門家集団(COE)を組成し、組織横断的に活動している。

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