【後編】変革の推進役育成を 組織・文化の醸成も鍵 〜DX人材フォーラム〜

目次

デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む日本企業が増える中、その成否の鍵は人材だ。データの重要性を理解し、適切にデジタル技術と組み合わせて、企業変革に主体的に取り組むことができるDX人材のニーズが一段と高まっている。しかし、その育成・確保は簡単ではない。そこで日本経済新聞社は「DX人材フォーラム」を開催。「DX実現に必要な人と組織の変革」をテーマに、専門家が最新の取り組み状況や対応策を紹介した。デジタルリテラシーの向上だけでなく、時代に合った組織・文化の醸成と、それを推進する人材育成の重要性について話し合われた。

特別セッション「自分事化できる環境構築を」

(中央)味の素 取締役 代表執行役副社長(CDO) 福士 博司氏
(右)CDO Club Japan 代表理事 加茂 純氏
(左)モデレーター CDO Club Japan 理事・事務総長 水上 晃氏

水上福士さんは最高デジタル責任者(CDO)としてDXをどう進めてきたのか。 福士過去の成功体験の繰り返しでは成長を持続できない。そこで企業価値を上げるため、組織・文化や人材などの無形資産を大切かつ育成することで、DXを推し進めてきた。推進には逆ピラミッド構造の組織が必要だ。社長がボトムから強いコミットメントを発信し、その枠組みに乗っかってCDOが動かすことがポイント。役員以下の従業員が変革を自分事化して、皆が主役になれる仕組みの構築が欠かせない。 加茂CDOは、企業におけるデジタル変革のリーダー。その役割は、文化を含め企業全体のデジタル化を推進する最高デジタル責任者と、企業内のデータを活用して事業創出などを図る最高データ責任者の2つだ。よりよい社会形成が企業活動のベースとなる中、その重要性は一段と高まっている。さらにデジタル前提社会に向け、CDOには3層の変革推進が求められる。1層目が社会全体・産業全体の変革、2層目が経済体制や産業体制の変革、3層目が自分たち自身の変革だ。 水上変革の推進で大切なことは何か。 福士社会の成長なくして企業の成長はないことだ。加えて日本企業には事業縦割りの弊害がある。そこで組織横断的な推進部署をつくり、従業員の意識改革と同時に、デジタル化を進めDXを実行してきた。 水上新しい資本主義への動きとデジタル変革の関係については。 加茂よりよい社会構築において、デジタル化は前提ではあるが目的ではない。ニューノーマル(新常態)な社会の仕組みづくりにデータやデジタル技術の活用は不可欠。 水上DX人材が活躍できる環境づくりとして、CDOに求められることは何か。 福士ビジネスがわかっていて、デジタルリテラシーが高い人材を大切にすることはもちろんだが、現状社内に多くはいない。そこでトップの理解を得て、外部と連携してDX推進のためのエコシステムを形成することが必要だ。 水上DX推進には、自分事化できる組織・文化の醸成と、社会課題解決に向けてデータを活用しながら連携して最適な社会を目指すことの重要性を改めて確認できた。

リーダー核に、周囲巻き込め

トレジャーデータ カスタマーサクセス担当執行役員 重原 洋祐氏

DXの推進には、ヒト・モノ・カネが鍵となる。

ヒトとは、誰が推進するのかを決め、必要な役割を担うメンバーをそろえることだ。モノとは、データ整備の方法や利用ツールの選定などだ。ツールの導入が目的化してしまいうまくいかないケースは多い。カネとは、必要なコストや投下資本利益率(ROI)を算出する方法などの明確化である。

ヒトについてさらにいえば、DX推進にはデータサイエンティストが必要といわれる。確かにビジネス力、データサイエンス力、データエンジニアリング力を持つスペシャリストは不可欠だが、あくまでも役割の一つ。DXを全社で推進するには、部署間など横の調整が大切で、ビジョンやミッションのすり合わせが重要になる。そのためにはスペシャリストだけでなく、プロジェクトリーダーやプロジェクトマネジメントの観点が欠かせない。

実際、成功するプロジェクトには必ずキーマンとなるリーダーがいる。組織としてリーダーを育て、リーダーが率先してツールを使い周囲を巻き込んでいくことでDXは推進される。またイノベーションを成功させるには、失敗から学び、取り組みを楽しむマインドも必要だ。

スキル習得は興味分野から

データサイエンティスト協会 スキル定義委員会 副委員長 佐伯 諭氏

DX人材は専門人材、遂行人材、一般社員の3つに分けられ、遂行人材が重要な位置を占める。専門人材とは、技術を実装するデータサイエンティストなどであり、遂行人材とは社内、現場に精通した上でデジタルが分かり、事業構想ができる人のことだ。

DX推進では高い専門性を持つ人材が必要となる。DXは一人で完結することはなく、専門人材同士でもスキルを補完しながらプロジェクトを遂行する。そして、そこに業務プロセスや社内事情に詳しい遂行人材がコミュニケーションを図り、プロジェクトをけん引し、真のワンチームとなることが成功の近道となる。

では遂行人材に、どの程度のデータ分析スキルやITスキルが必要なのか。多くの人は既に一部を身に付けている。ハードルを高く考えず、現在のスキルに加え、専門人材との会話が成り立つぐらいを目指すことだ。スキル習得は興味がわく、もしくは好きなところから少しずつ勉強していけばよい。ほどほどの量をこつこつと学ぶことがポイントだ。

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