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医療課題克服へデータ活用 第1部 医療のデジタル化の現状と課題 〜医療DX①〜

目次

国際標準確立に貢献を

東京財団政策研究所 研究主幹 渋谷 健司氏

新型コロナウイルスのワクチン接種デジタル証明書により、国民の77%の医療情報が突如としてデジタル化する可能性が出てきている。日本とアメリカはスマートヘルスカード(SHC)を導入したが、ヨーロッパ、中国との間で医療データの取り扱い規格の主導権争いはもう始まっており、将来の医療DXをどこがリードするかという将来を見越した覇権争いが起こっている。ただ、理念なき医療データ活用は失敗する。医療データの覇権争いは理念の競争でもあり、「本人によるデータ管理」「偽造防止性を含めたデータの真正性」「エビデンスに基づく政策立案への活用」「相互運用性」「国際標準の確立」の5つが非常に大事だ。日本においては個人が自らの健康医療情報を見る「パーソナルヘルスレコード(PHR)」の良いユースケースにもなり、公衆衛生と医療の行政、医療データの一元化に向けたいいテストケースにもなる。日本は医療DXで日米アジアでの国際標準確立に貢献すべきだ。

AI実装で負担を軽減

公益社団法人日本医師会 副会長 今村 聡氏

内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)に取り上げられている「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」は、AI、IoT、ビッグデータなどの技術を用いて、高度で先進的な医療サービスを提供するとともに、医療従事者の抜本的な負担軽減を図り、より一層患者に寄り添う医療が行えるようにするというものだ。

プログラムの下には5つのサブテーマがあり、それぞれが密接に連携しながら進めているが、AIホスピタルを実装化するためのプラットフォームの構築では2021年4月に「医療AIプラットフォーム技術研究組合(HAIP)」を設立。研究終了後のAIホスピタルシステムのガバナンス体制を構築するため、日本医師会の中に「AIホスピタル推進センター(JMAC AI)」も設立した。

また、日本医師会は、健診データを標準化し、一元的に管理するため、健診関係団体と協議しながら「健診結果データ標準化共同センター」の設置を進めているほか、医療情報の安全な収集と匿名情報への加工を行う「日本医師会医療情報管理機構(J︱MIMO)」も設立した。関係する組織が連携し情報や技術などを循環させることで、課題解決ができると考えており、日本医師会もビッグデータ解析やAI技術の活用による医療機器などの開発と普及による質の高い治療技術の導入を推進していきたい。

患者レジストリ、創薬に活用

国立国際医療研究センター 理事長 國土 典宏氏

日本外科学会、日本消化器外科学会が主導し、NCD(ナショナルクリニカルデータベース)が発足。2011年からほぼすべての日本で行われている外科手術が登録され、累計1100万件を超える手術データが入力されている。肝がんレジストリは1960年代から全国の症例登録を開始。カバー率が3分の1から4分の1という世界に類を見ないデータベースだ。

患者レジストリを臨床開発、特に創薬に活用するCIN(クリニカル・イノベーション・ネットワーク)も2015年くらいから始まった。日本には700件を超えるレジストリがあるが、連携できていない。そのレジストリデータを活用する事業を6つのNC(ナショナルセンター)が共同で進めている。新型コロナ・レジストリは藤田医科大学と共同で20年3月に始めた。5万例を超える患者のデータを全国700〜800施設から集積している。新興・再興感染症にも対応できる枠組みとして、オールジャパンでサンプルを集め、ゲノム医学の力を借りて研究を進める「REBIND」事業も始まった。

J︱DREAMSは診療録直結型全国糖尿病データベース事業で、診療テンプレートを使い、自動的にデータベースに入れてしまうのが特徴だ。これにより、記載情報が充実した。いろいろな疾患に拡大できれば現場の負担がかなり減ると期待したい。

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