電子カルテの使い勝手向上 第2部「電子カルテシステムの改革に向けた提言」と実装 〜医療DX②〜

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デジタル改革を通じて、日本の医療が抱える課題を克服する。12月7日に開かれたシンポジウム「健康・医療のデジタル改革に向けて MEJ四次元医療改革研究会」(一般社団法人Medical Excellence JAPAN=MEJ、日本経済新聞社主催)は「電子カルテシステムの改革に向けた提言」を公表。国、医学界、産業界の進むべき方向を示すことで、医療改革に向けた第一歩を踏み出した。

第2部 「電子カルテシステムの改革に向けた提言」と実装

座長 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 理事長 藤原 康弘氏

標準化でデータ生かせ

国立国際医療研究センター 医療情報基盤センター センター長 美代 賢吾氏

医療の本質は控えめに言っても半分が情報処理で、親和性も高く、医療こそDXを進めていくべきだ。創薬、医療AI、ゲノム医療を実現するには大量に蓄積された医療情報が必要な一方、データを生み出すのは現場の医師や看護師。生み出されたデータが生かされるようにするのが今回の電子カルテ改革の要点であり、電子カルテを起点に医療のイノベーションと国民へのサービス強化など医療全体の改革を進めていきたいというのが提言書の中身だ。

電子カルテデータは天然資源のようなもので、そのままでは使えない。効率よく収集し、研究で使えるように加工し、医学研究者に届けるためのエコシステムの構築が必要。データ構造、データアクセスなどの標準化のプロセスを踏んでようやく使えるデータが集まるという議論が飛ばされているのではないか。電子カルテも医療機関運営のための診療・研究・経営を含めたDXを促進するシステムへと変貌していかなければならない。日本の国民皆保険下の医事会計システムは世界最強の情報収集ツールだが、これも新しいデジタル時代に適応した方法に進化させる必要がある。

こうした背景をもとに電子カルテの改革として、周辺領域も含めて包括的に8つの提言(30面参照)としてまとめた。具体的な実行戦略を記載した一方、重要度、優先順位は記載していない。どういう順番で国民にサービスを提供していくか、政治と行政に期待したい。データの入り口であり、医療の質にも関わる電子カルテのレギュレーションと根拠法も進めていただきたい。日々悩む患者のデータをためた電子カルテの情報を生かすことが次の新しい時代への医療へとつながる。

6項目・4文書から標準化

厚生労働省 審議官 大坪 寛子氏

厚生労働省では医療機関などにある医療データを交換する仕組みの標準化を進めており、次世代の標準フレーム規格「HL 7FHIR」を使い、やり取りすることを考えている。現在は関係団体が作成した仕様が標準規格として採用可能かどうかを医療情報標準化推進協議会(HELICS協議会)で審議しており、審査を経て、厚労省標準規格として案内する。

傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、救急時に有用な検査情報、生活習慣病関連の検査情報の6項目の標準コードを定め、診療情報提供書、キー画像を含む退院時サマリー、処方箋データ、健診結果報告書の4文書から標準化を進め、段階的に拡張する。

新薬開発にも貴重な情報

日本製薬工業協会 会長 岡田 安史氏

創薬研究では、どの遺伝子が発症や進行に関わり、血中や臓器にどんな変化が生じているのかといった非常に詳細な情報が重要となる。大規模でなくても詳細なデータが必要だ。一方で承認後の調査では、疾患名や検査値など通常の診療データがあればある程度は十分だが、大規模なデータが必要になる。このように製薬企業の各バリューチェーンでは必要となるデータの内容や量が異なるため、目的に応じたデータ基盤が必要だ。

がんは遺伝子を調べることで、悪性度や最適な治療法が分かるようになってきた。近年がん遺伝子パネル検査が保険適用され治療で生かされており、遺伝子情報やゲノム情報の医療・創薬応用への期待は大きい。まだ治療法が十分にない疾患にも、新たな診断方法や治療薬の開発に必要な知見を見いだすために、全ゲノム情報と医療情報とを統合して解析することが重要だ。

大規模な医療情報を活用するには、電子カルテの普及と医療情報の標準化・構造化によるデータ連結が必要だが、日本はOECD諸国の中で最も遅れている。国民皆保険下で蓄積される診療記録をデータ化し活用することは、国民の健康寿命の延伸を支える最重要課題だ。様々な健康医療データが連結できれば、新薬を作るために必要な情報を効率的に研究開発に活用できる。

健康寿命の延伸のためには、治療薬はもとより病気の予知・予防のソリューションを提供していく必要がある。医療データ活用の成果を国民に速やかに還元できるよう、様々なステークホルダーと取り組んでいきたい。

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