標準化起点に医療DX推進 第3部 産業界からの医療のデジタル改革への期待 〜医療DX③〜

目次

第4部 健康・医療DX推進にむけて

座長 参議院議員 武見 敬三氏

所見活用し、政策を策定

近藤達也先生には、「アジア健康構想」を立ち上げたときに、医薬品医療機器の規制改革についてのタスクフォースの作り方を教えていただき、座長として取りまとめをしていただいた。これが今日のアジアにおける医薬品のレギュラトリーサイエンスに基づくネットワークづくりの一つの大きなきっかけになった。近藤先生はこのコロナ禍でこれからの医療制度の在り方を考えたときの一丁目一番地は電子カルテの標準化と全国的な規模でのシステム化だとおっしゃっておられ、改めてその基本的なご認識に基づき、遺志を継ぐ形で、これらのセミナーでの所見が今度は現実の政治にしっかりと反映されていくことが近藤先生のご遺志に報いることではないかと思う。

これから制度化の議論が政府与党の中で進む。その大きな転換期に間違いなく我が国はこれから入る。それぞれの判断について大局観をきちんと持った上で制度化を正確にしなければならない。我々政治家は、時に波乗りをやっているような気分にもなって、いろいろな条件がそろったときに一気に果断に判断すると世の中を大きく組み替えていくことができる。その中心的役割を担っておられる加藤勝信・社会保障制度調査会長が、こうしたご認識を実際の政治の場で発揮されることを強く期待しているものだ。

そして最後に近藤先生の貴重な一丁目一番地という言葉を私は忘れることができない。この考え方をしっかりと政治の場に生かして、電子カルテの標準化、そして全国的な規模でのシステム化を進めながら、大きな医療制度の変革期において、今日お集まりの皆様のご所見を確実に活用していきながら政策策定に入っていきたいと思っている。

危機感を共有、今こそ改革

衆議院議員 加藤 勝信氏

医療分野だけではなく、日本の社会全般でデジタル化への取り組みが遅れている。2021年9月にはデジタル庁も発足したが、今回のコロナ禍の最前線でいろいろな対応をする中で危機的な状況だと改めて感じたところだ。これまでもデジタル化の取り組みは厚生労働省を中心に進んできていないわけではないが、そのスピードを見ると、むしろ世界からより離されてしまっている。医療情報利活用途上国と位置づけているが、日本の医療の遅れにつながるのではないかと強く懸念している。

今回のコロナ禍でまず感じたのはデータが集まってこないこと。全国のコロナの感染者数を集計するのにも本当に大変なところからスタートした。医療機関との連携も進んでいると言える状況にない。結果として医療現場における情報の格差、情報利活用の格差が相当広がってきている。どこで遅れてきているのか。データに基づく政策活用度とシステムを活用するための環境準備度を縦軸横軸にすると、悲しいことに日本はゼロ、原点に近いところにいる。危機感を共有し、遅れてきた原因を究明しながら克服していかなければならない。

今回のコロナ禍では情報を収集するための仕組みが逆に現場の負担を増やし、結果的にデータが集まらなくなっていく状況にもなった。収集する段階での仕組みが非常に大事になる。リアルタイムでいいデータが、しかも標準化された粒がそろった形で存在していることが、大きな一歩を踏み出すためには不可欠だ。入力段階のデータの標準化を行い、情報を正しくスピーディーに収集する仕組みを作ることが求められている。

なぜそれが進んでこなかったか。5つのポイントが考えられる。①医療あるいは医療現場において必要性や動機づけがなかなか生まれてこなかったこと。②データとして活用することも考えれば、電子カルテの前のカルテの段階、医療そのものの標準化を進めていくことが大事だということを理解し、医学界、医療界、デジタルの分野が一体となって取り組んでいく必要がある。③日本では標準化の概念が非常に希薄という文化的な背景もある。ユニバーサルに進めようとすると標準化しなければ何も進まないという意識を共有していかなければいけない。④標準化がどれだけの便益をもたらし、どれだけのコストがかかり、誰が便益を受けていくのかを把握した上で、便益とコストを相互にマッチングさせる取り組みが必要になる。⑤全体を統括する力の部分も必要だ。こうした組織が不在であったために、全体として一気に進めていくことができなかった。

デジタル改革が進むことで、感染症患者の把握が瞬時に行えるようになる。医療AIによる患者の診断支援や重症化、予後予測も可能になる。さらに新薬・ワクチンの開発、コロナ感染症に対する研究そのものも、より日本から様々な形で出ていくのではないか。医療機関や保健所間におけるデータのやりとりもスムーズに進み、必要な支援が適時に行われていく。リアルタイムで情報が上がってくれば、政策判断もより的確にできるなど、いろいろなメリットがある。

まず政府の中に推進責任組織を持つことが必要で、法律的な手当ても求められる。そしてすべてのステークホルダーが参加する検討の場を設け、工程表を作っていくこと。何より大事なのは国民に対して個人情報がどう守られ、改革を通じてどんなメリットが出てくるのかを説明していくことだ。

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