DX 難しく考えず、まず実行

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幹部は失敗許す寛容さを

―――企業のリテラシー向上も待ったなしだと思いますが、いまだDX=デジタル化と思っている企業が多い気がします。ビジョンと明確な進行プランを作り実行するには、トップのリーダーシップと社員が腹落ちする説明が重要ということでしょうか。 松尾それもあるが、そもそもデジタルの世界は試行錯誤の回数を増やさないといけない。上が計画してその通りにちゃんと動きますよという話よりも、個人が小さいトライアルをたくさんして、その中で良いものが大きくなっていく。「DX=組織をフラットにする」に近い。社員の試行錯誤に対して寛容な、挑戦を許すような組織にしていくのが上層部の役割だ。もちろん方向性は考えるべきだが、文化を変えるという側面の方がより重要だ。 CDOの優れた方ほど柔らかいというか、従来的な権威主義的な薫りがしない。若い人の意見をすごく大事にするし、辛辣な意見にも寛容だ。そういう雰囲気だからこそ、社員が自由に伸び伸びやれる。 ―――スマートシティーの推進が全国で行われているが、地方自治体でも人材の不足が大きな課題になっています。効果的な施策はありますか。 松尾DXもスマートシティーも、目的を表す言葉ではなく手段だ。そこが見えにくい感じがする。どんな価値を提供したいのか、どんな課題を解決したいのか、明確にすることが大切だ。 人材不足ということは、需要が増えて供給が少ない。人材に対する価格=報酬は上がっているのだから、そこを目指して勉強すればいいと思う。中小企業もモノづくりの話になれば自信満々に話すことができる。それはやり込んでいるからで、DXもやり込めばいい。それなのにやらないのは、最初の取っ掛かりの部分、ハードルが高いと思い過ぎなのだと思う。 ―――身近に感じるためには接点を増やすことが必要。 松尾極端にいうと、強制的に今から1カ月間、プログラミングだけやってくださいとすればいい。デジタルの先生を呼んで実習すれば、1カ月後にはすごく会社が変わる。プログラミング自体はそんなに難しいことではない。まずはやってみればいい。全員がプログラミングをやれば、全然違うと思いますよ。人材不足で困ったという話も僕からすると不思議で、やった方が得なのでやればいい。やりたくないから、いろいろ理由をつけているが、やった方が給料も上がるし、いろいろなチャンスが出てくるのだから。 ―――専門家から見れば、もどかしい。 松尾今の日本のデジタル化は、ハンダごてを一回も握らずにモノづくりをどうするだとか、エクセルを一度も触らずに日本経済を良くするにはといった議論をしているような感じがする。少しでいいので、まずやってみないと何の話をしているのかもわからない。野球の仕事をしようと思えば、まず一回やってみる。その際、キャッチボールは大事だけど、そうした練習を全部やってから試合をするのではなく、実際には早い段階から試合をする。試合が面白いからやるわけですよ。 ―――確かに、やればどうしたらバットに球が当たるのか、考えますね。 松尾何より楽しさがわかりますよね。楽しければ、続けてやる。プログラミングも同じで、プログラミングができることとAIを動かせることは、ほとんど同義。レベルの高いAIもあるが、最新のAIでも動かすだけなら、プログラムができる人には難しくない。プログラミングを全くやったことがない人でも、AIの内容を確認して精度を上げるまで3時間あれば体験できる。企業の偉い人向けに3時間コースの講座を作ったら、こういうことかとわかって、いい質問が出るようになった。 やり方としては、私は「出口から行った方がいい」と言っている。どうやって付加価値を出し、どうもうけるかということなので、AIをどこに使ったらいいのか考えてみる。そこから逆算してどういう教育をしていけばいいのか、という発想でいい。

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