日本企業DX巻き返しへ デジタル「新・国富論」

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デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが広がる中、DXの水準が問われている。コスト削減や業務効率化で満足し、本来の目標である企業経営の大変革に至っていないのではないか。こうした問題意識に基づき経済産業省は近々、新たな「DXレポート2.2」を発表する。「デジタル産業アクト(仮)」や社会運動論的アプローチを追加し、日本企業のDX巻き返しに向けた「新・国富論」と位置付ける。経産省商務情報政策局情報経済課アーキテクチャ戦略企画室長で工学博士の和泉憲明氏に提言の狙いを聞いた。

経産省「DXレポート2.2」

コスト削減に終始せず産業創出の羅針盤に

経済産業省商務情報政策局情報経済課 アーキテクチャ戦略企画室長(工学博士) 和泉 憲明氏

―――通算4回目となる新たな「DXレポート2.2」のポイントを教えてください。 デジタル時代の「新・国富論」です。IT(情報技術)をコスト削減に役立てるノウハウは定着しましたが、コスト削減に目的が偏りすぎているとの問題意識を持ちました。デジタル化を100年に1度の大変革と捉えて新市場を創り出すならば、コスト削減だけでなく、企業、製品、サービスの強みをデジタルで再定義し、日本社会全体で産業創出に向かうべきです。これが今回の提言の趣旨です。

―――日本企業のDXの課題は何ですか。 デジタル技術を使う場合、ビジネスでできていないことがイメージできず、自分たちがよく知る業務に注力しがちなのが課題だと思います。目先の効率化やコスト削減にばかり注力しがちで、既存の仕事や仕組みの代替・延命に終始していないでしょうか。デジタルはレッドオーシャン(競争の激しい既存市場)で生き残るための道具ではなく、ブルーオーシャン(未開拓市場)に旅立つための羅針盤になるべきです。 ―――そもそものDXの定義とは。 「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というのが情報学者エリック・ストルターマン氏による定義です。私たちは「企業の競争力強化に資するために、製品、サービス、バックオフィスなどあらゆるところでデジタル中心の合理性を追求する」という趣旨で再定義しました。しかしデジタルが効率化の道具に矮小(わいしょう)化しているとみています。既存の作法や組織のルール、カルチャーは足かせになります。古い考えの人にはライフスタイルの変化が見えていない可能性があります。例えば、レンタカーとカーシェアリングは根本的に異なり、社会は車の新しい使い方を要求してきます。そうした変化に順応できているかどうかの見極めが必要です。

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