【後編】九州からニッポンを動かす

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デジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて地域課題を解決する機運が高まる中、それを担うデジタル人材の育成が急務となっている。日本経済新聞社は「日経デジタルフォーラム in Fukuoka ~九州からニッポンを動かす~」を福岡市からオンラインで開催。パネリストからは、産学官の連携やスタートアップ育成など福岡や九州が持つ強みを生かしながら、デジタル化を先導することで、地域の活性化や新産業の創出につなげるべきだとの考えが示された。

九州発デジタル社会のニュービジネス創造

人材確保の仕組み重要

(左)シタテル代表取締役 河野秀和氏
(右)AGRIST代表取締役 兼 最高経営責任者 齋藤潤一氏

(左)Salesforce Ventures 常務執行役員 日本代表パートナー 浅田賢氏
(右)モデレーター│デロイト トーマツ アクト 代表取締役社長 信國泰氏

信國デロイトトーマツアクトは福岡にデジタルトランスフォーメーション(DX)拠点「デロイトキューキャンパス」を立ち上げました。我々は触媒としてデジタルの力で社会課題を解決するエコシステムをつくっています。 齋藤アグリストは宮崎県新富町という人口1万7000人の小さい町にあり、自動収穫ロボットで農業課題を解決するビジネスを展開しています。農業にDXは絶対必要だという農家からの声を受けて会社をつくりました。ビニールハウス内を移動する吊り下げ式のロボットで、カメラがAIを活用して収穫物を認識し、夜も収穫して、起きたときには終わっている。高齢化や担い手不足という農業の課題解決をやっています。 河野シタテル(熊本市)は衣服・ライフスタイル産業に特化したクラウド事業として、クラウド販売支援、生産支援、クラウドフルサポートの3つのメニューを提供し、登録事業者は2万社超、それを支える国内外の工場とサプライヤー企業が1500社あります。 人・しくみ・テクノロジーで衣服の価値を変えるのがミッションで、喫緊の課題である大量生産、大量在庫、大量廃棄の解決に取り組んでいます。「1/2 ENERGY プロジェクト」として、2030年までにシタテルのプラットフォームで衣服を生産すると、消費エネルギーが2分の1になるという挑戦もしています。 浅田セールスフォースベンチャーズはスタートアップに出資をするチームで、日本では2011年から活動しています。現在の投資支援先に九州の会社はありませんが、東京の次に注目すべきところは九州です。古くから支援している印象で、資金の出し手も増えており、顔が見える近さで助け合って盛り上げている点も魅力です。 信國九州で事業を起こしてうまくいってきた点、逆に解決されるべき課題はありますか。 齋藤基本的にはメリットしかない、何より第1次産業は大チャンスだと思います。農業というキーワードが共通の認識としてあるのがすごくいい。ビジョン、ミッション、バリューを経営者自身が体現することが重要で、今後はすべての大陸からビニールハウスの農業データを取得し、世界中の農業の課題解決に役立てるエコシステムをつくりたいと思います。 浅田スタートアップがたくさん起業されて、事業も育っていく中で、人材の確保が非常に課題になってくる。東京や海外の人が九州のスタートアップで働きやすくなる仕組みづくりが行政の観点からもっとできると思います。

DXが切り拓く 地方の未来

場所にとらわれない働き方へ

(左)YE DIGITAL常務執行役員 品質・業務改革本部 本部長 石田聡子氏
(右)西日本シティ銀行 デジタル戦略部長 吉村剛氏

モデレーター│日本デジタルトランスフォーメーション推進協会 代表理事 森戸裕一氏

森戸デジタルトランスフォーメーション(DX)は最終的に何を目指すか。デジタルを使うことで人々の幸福度を上げながら九州をどう活性化していくかを議論します。 石田私自身は社内のDXを担当しており、ここ3年は場所にとらわれない働き方を実現するデジタル化に注力し、どこにいても疎外感なく仕事ができる形を整えてきています。ただ、会社に来なくていいのかというとそうではない。雑談をしながらアイデアを膨らませる、会社に行きたくなるオフィスをつくることも大事です。昨年、小倉駅のすぐ近くに本社を移転しました。カフェの雰囲気で、雑談ができるスペースをつくり、会議室もたくさん設けて、ガラス張りで気持ちがオープンになるオフィスにしています。 吉村顧客との接点になるデジタルチャネルが重要で、個人向けには西日本シティ銀行アプリ、法人向けにはNCBビジネスステーションを中核に位置づけ、ここを起点にさまざまなサービスを提供する。利用状況をAIで分析し、最適と思われる情報を最適なタイミングで提供することにも取り組んでいます。手続きのデジタル化を進め、外訪先から手続きが完結するような取り組みもしています。 森戸九州エリアが持つ優位性をどう考えますか。 石田私は東京から北九州に戻ってきましたが、一般的に自然があり、子育てができて、親の介護もできるという充実感を考えると、地元で働きたい気持ちは誰にでもあると思います。どこにいても働ける環境になってきている今であれば、九州に居ながら東京の本社機構の一員として働くことも可能になってきたと思います。 森戸働く場所として九州を選択する流れをどうサポートしますか。 吉村3月に初めてビジネスコンテストを開催し、地場の大手企業とスタートアップの双方に喜んでいただきました。昨年ようやくベンチャーキャピタルを立ち上げましたので銀行がハブとなり、こうした取り組みを加速する。伴走型でベンチャー企業の成長をサポートするなど、より積極的に取り組んでいきたいと思います。デジタル化支援ではビジネスプロセスを変える、モデルをつくるサポートができる企業との連携を予定しています。 森戸地域の強み。地域の課題を一番知っている方々が、オール九州でどう解決していくのか。そういうところを進めていけば九州の強みが生かされると思います。

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