「書面、押印、対面」 今は昔

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ヤフー、電子化の成果実感

民間の取引においても押印の見直しが進んでいる。日本を代表する大企業をはじめ、業界を問わず脱ハンコの動きが活発化。先行する企業では成果を実感している。

例えばヤフーは、事業スピードの加速を目的に2019年9月に「電子サイン(電子署名)」の利用を始めた。

「競合より一日でも早く契約したくても、紙では国内で1〜2週間、海外だと1〜2カ月かかることも珍しくない」と語るのは、同社の黒岩高光氏(コーポレートグループピープル・デベロップメント統括本部オフィス・経営支援本部経営支援部)。「電子化により、契約締結は最短3分で済むようになった。手続きにかかる時間を大幅に短縮でき、スピーディーな事業展開、競争力の強化が可能になる」と説明する。

20年に入ると新型コロナウイルスの感染が広がり、4月には初めての緊急事態宣言が出された。急速にリモートワークが広がった一方で、ハンコ出社を余儀なくされた企業も多く、脱ハンコの機運が盛り上がった。

そうした中で同社は、20年度内に民間取引先との契約手続きの「100%電子サイン化」を実現すると宣言し、取引先に協力を呼びかけた。契約締結時に電子サインの利用を案内するとともに、不明点があれば経営支援部が一括して取り組みを推進。電子化のメリットや利用の流れをまとめたブログを公開するなど啓発活動も進めてきた。

コストメリットも

その結果、対応可能なすべての取引先との契約手続きを電子サインで締結し、目標を達成した(法律に定めのある場合や取引先の事情で対応できない場合を除く)。「色々な部署で個別に推進するのではなく、私の部署で一括対応したことがスムーズに進んだ要因の一つだ」と黒岩氏は振り返る。

電子化のメリットには、事業スピードの向上に加えて印紙税や郵便料金を削減できるコストメリットもある。時間や場所に縛られずに仕事ができるようになる利点も大きい。「当社はコロナ後もリモートワークを継続する予定だ。稟議(りんぎ)書の決裁といった社内手続きも電子化している。ニューノーマルの働き方に変えていくには電子化が必須だと思う」(黒岩氏)

同社は今後も啓発活動を続け、契約の電子化、電子サインの利用を促していく。「単なる習慣から押印を求め、事業スピードが落ちているとすれば、それこそ問題だ。民間企業も官公庁も電子サインに移行し、事業スピードを加速していくことが、世界に対する競争力の強化にもつながる」と黒岩氏は力を込めた。

広がる取り組み

同様の取り組みは業界を問わず広がりをみせている。

半導体用研磨剤などを製造するMipoxは、電子署名サービスによるオンライン上の契約締結に対応した。決裁スピードの迅速化とリモートワークでの業務継続を実現する。人材派遣業界では、パーソルテンプスタッフが派遣スタッフの在宅勤務覚書への押印を電子サインでも可能にした。派遣先企業の担当者が出社しなくても覚書をスムーズに締結でき、派遣スタッフの迅速な在宅勤務への切り替えを促す。不動産賃貸仲介のハウスコムは、賃貸借契約の完全電子化を見据えて関連システムを導入。入居申し込みから賃貸借契約まで電子化できる体制を整えた。

今後も脱ハンコを契機としたデジタル化の流れは加速していきそうだ。

本コラムは日本経済新聞掲載 広告企画「脱ハンコ特集」を採録したものです。

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