DXへ 日本支える気概で

持続可能な世界への対応やコロナ禍で変わる働き方など、社会の変革にデジタル化でどう対応すべきか。そのカギを握るのが、IT(情報技術)システムやデータを活用してサービスやビジネスモデルを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。経済産業省商務情報政策局情報産業課長の西川和見氏と情報サービス産業協会(JISA)会長の原孝氏が、デジタル化の現状と課題、今後の展望について話し合った。

経済産業省 商務情報政策局 情報産業課長 西川和見氏

リンクレア特別顧問 情報サービス産業協会(JISA)会長 原孝氏

対談

「仕様通り」から「戦略提案」へ

―――情報サービス産業特集では今、DXが大きく注目されていますね。 西川政府は、デジタル庁で、DXにしっかり取り組む。経産省では、2018年の「DXレポート」の続きの議論にも取り組んでいる。DXを支えるデジタル産業とデジタルインフラ、そしてテクノロジーの根源である半導体にも注力すべく、半導体・デジタル産業戦略検討会議も発足させた。データセンターも重視している。  「DXレポート2」の中間発表では、単なるITシステムではなく、企業文化の変革にまで踏み込むことが指摘された。デジタルは手段であり、お客様の価値をどう提供するかが最も重要。ソフトウエアに限らず、他の業界との共創も必要になってくる。 西川ビジネスモデルやマインドセットから変えていくことが重要だ。そのためには、ハードではなくテクノロジー。今後は、エネルギーなど持続可能な世界のための取り組みも必要になる。そのために、5~10年後のプロジェクト、仕事の仕方を考えた、様々な分野の縦横無尽な融合、共創が求められる。 ITベンダーはお客様と一体になったチャレンジが必要。人間に例えれば、お客様が筋肉、金融が血流、ITベンダーが神経になる。仕様通りにシステムを作るだけでなく、戦略を提案し、お客様の期待以上の価値を提供する。そのために、技術だけでなくビジネス面での知識も必要になる。

新たなニーズが人を育てる

―――そうなると人材の育成・教育が急務ですね。 西川必要は発明の母。地域行政の課題解決が必要ならそれに応じた新しいテクノロジーや人材が出てくるだろう。製造業や金融だけでなく、そうしたプラスアルファの機会をどれだけ増やせるか。中長期的には、通信と演算、コンピューティング、エネルギーの制約をどう乗り越えるかなど、テクノロジーの将来を見据えた開発も必要になる。 危機感がないとイノベーションは起こらない。カギになるのは強い、失敗を恐れず実行する、闘争心がある人材。様々な業界、多くの企業から人材が集まり、切磋琢磨(せっさたくま)することが必要だ。全国の中高生男子に対して行ったアンケートでは、ITエンジニアは将来なりたい職業のトップクラスだった。三角形の底辺を広げれば頂点は高くなる。 これからのIT業界は、様々な社会課題にも果敢に挑戦することが求められている。DXの時代には、創造性や独創性といったセンス、体質が重要になる。 西川日本を支えるプライドを持ってほしい。デジタル産業、デジタルインフラ、半導体は米や石油のように社会の基礎的な必須基盤だ。そういう認識を持ってほしい。

環境に優しいITで幸せを

―――支える日本を持続可能にする課題がグリーンですね。 西川グリーンを進めるために、デジタルによるスマート化が必要だが、それにはエネルギーが必要。現在、IT関連で、日本全体の電力消費の4%程度を使っているが、今後世界のデータ通信料が急増し、各種機器の省エネ化が全く進まないとすれば、2030年にはそれが大幅に増加するという民間の試算もある。消費電力が増えないテクノロジーを開発しないとグリーン化が止まってしまう。メガデータセンターは、高圧電力、いわゆる重電業界の技術が必要だが、そこに200ボルト以下の軽電のテクノロジーを融合させるなどの工夫が必要になる。 業界を超えたアライアンスはもちろん、消費者レベルでの意識が高まっている。環境に優しく、持続的な社会をつくろうという草の根レベルでの取り組みがますます重要になってくる。2006年に作成した「JISA低炭素化社会実行計画」でデータセンターの電力消費原単位を11.4%削減した。一方で、AIによる最適化で、例えば物流の効率かを進めることで環境保護に寄与していくという考え方もある。 ―――最後に一言ずつ。 西川かつてのエネルギー基盤として石油政策を推進していた時代と同じような気概を持って、デジタル分野の産業政策にしっかりと取り組んでいきたい。  「JISA2030」という新しいビジョンステートメントを策定した。これにより、環境に優しいIT、人に幸福感を与えるITの実現に向けて挑戦し、デジタル技術で「人が輝く社会」を創っていきたい。

本コラムは日本経済新聞掲載 広告企画「情報サービス産業特集」を採録したものです。

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