デジタル技術で「人が輝く社会」を創る

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激しく変化するビジネス環境に対応するため、企業におけるデジタルトランスフォーメション(DX)への取り組みが急務となっている。政府もデジタル社会の実現に向けた重点計画を推し進める。そんな中、情報サービス産業協会(JISA)は『デジタル技術で「人が輝く社会」を創る』をビジョンに掲げ、企業や行政のDX推進を強力に支援する。JISAの原孝会長が経済産業省情報産業課の渡辺琢也ソフトウェア・情報サービス戦略室長と、国内DXの現状と課題、DX推進に必要なデジタル人材などについて、熱く語り合った。

情報サービス産業協会 会長 原 孝氏

(はらたかし)1978年ビーコンシステム(現リンクレア)に入社。2004年に同社代表取締役社長。19年にJISA会長に就任。21年に藍綬褒章受章

経済産業省商務情報政策局 情報産業課 ソフトウェア・情報サービス戦略室長 渡辺 琢也氏

(わたなべたくや)2004年東京大学大学院修了後、経済産業省に入省。21年5月に内閣官房ワクチン接種推進大臣室に配属され、同年9月より現職

DXは経営戦略そのもの

―――国内のDX取り組み状況は。 渡辺経済産業省では2018年からDXによる企業競争力の強化を推進してきた。「DX推進指標」を策定し、その進捗状況を把握している。それによると、我が国のDXは着実に進んでいるものの、組織全体で本格的な推進に至っている企業は依然少ないのが現状だ。DXとは経営戦略そのものであり、デジタル技術を活用して新たな価値を創出すること。業務のデジタル化や基幹システムの刷新を目的としていては本質的なDXにはたどりつけない。 私はDXに挑戦すること自体に面白さを感じてもよいと思う。業務効率化やデジタル技術の活用はもちろん大切だが、DXは新しいことに挑戦するための手段。ハードルを上げ過ぎると進まなくなるが、トライアンドエラーで進めれば、何かしらイノベーションが生まれる。国内の情報化投資が順調な伸びを見せているいまだからこそ、将来に向けた企業変革への挑戦が欠かせない。我々情報サービス産業は顧客企業のDXを手伝うと同時に、自らもDXを推進し、価値創出に取り組む必要があると考えている。

―――経済産業省は今年1月に「デジタル産業への変革に向けた研究会」を立ち上げた。 渡辺DXレポート2で、DXはIT(情報技術)システム更新の問題ではなく、企業文化刷新の問題であり、デジタル企業への変革はレガシー企業文化からの脱却が重要だと指摘した。そこで研究会では、DXによって目指すべき姿や変革の方法を具体的に示すため、議論を進めてきた。今回新たに公表するDXレポート2.2では目指すべき方向性を「デジタル産業宣言」として発信し、変革の重要性や方法、政策を具体的に提示することで、企業にさらなる行動を促していく。 新型コロナウイルス感染拡大などにより、世界は大きなパラダイム変化の渦中にある。まさに新たな価値創出が求められており、デジタルの力をどう生かすかが鍵だ。そこでJISAではニューノーマル(新常態)下の具体的アクションとして、『デジタル技術で「人が輝く社会」を創る』を掲げ、デジタル産業への変革を活動テーマとしている。

リテラシーの底上げ不可欠

―――DXを推進する上で、デジタル人材の不足が懸念されている。 渡辺あらゆるビジネスパーソンが基本的なデジタルリテラシーを身に付けなければ、社会全体のDXは起こらない。そこで必要なデジタルスキルを示し、リスキリングの促進など人材育成の底上げを図っている。またデータサイエンティストなど、専門家の不足は大きな課題であり、学びの場をもっと増やす必要性を感じている。データから価値を創出してビジネスにつなげていく、業務とビジネスの懸け橋となるデジタル人材を増やすことも重要だ。 情報サービス産業には100万人強の優れた技術者がいる。彼らを磨き、鍛え、機会を与えて、世界をリードするITアスリートとして育てる活動を推進してきた。その活動を加速させるため、今年「JISA版ナショナルトレーニングセンター(NTC)」を開設する。エンジニアにとっての虎の穴であり、ここからITサービス業界の“大谷翔平”を育てたい。 渡辺身に付けたデジタルリテラシーを実践で生かすことが大事だ。例えば、地域の社会課題を解決するなど、デジタル田園都市国家構想実現のプロセスの中で活躍してもらえれば、社会全体のDX推進につながっていく。 NTCに加え、もう一つの目玉事業として「JISA版はやぶさプロジェクト」を推進している。他者との共創を通じて、社会課題解決のムーブメントを起こすのが狙いだ。既に和歌山県などと取り組みを始めた。次世代を担う人材育成の場としたい。

顧客企業と一体で推進

―――中小企業のDX推進も課題だ。 渡辺組織が小さい分、大企業よりも中小企業の方がDXの意識や目的を浸透させやすいし、DXのチャンスは大きい。一方で取り組み方がわからないという声も多い。中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引きを参考に、まずは一歩踏み出してほしい。 JISA版はやぶさプロジェクトではIT企業が持つ技術と人材を結集して、世界で戦える商品やビジネスを中小企業とともにつくり出していく。はやぶさが帰還し、小惑星からサンプルを持ち帰ったことに感じたようなワクワク感を、DX推進で実現したいと考えている。

―――それが「人が輝く社会」を創ることに結びつく。 持続可能な開発目標SDGsやソサエティー5.0の実現といった、普遍的で公共の利益に資する貢献が求められる現在、企業は「人がより元気になれる場所」「夢を求め、実現を目指す場所」であることが期待されている。我々はITをサービスする業界。顧客企業と一体になって、そうした未来社会をつくっていく。 渡辺情報サービス産業にはデジタル技術という強みを生かして、新たな価値創出をパートナーとともにつくり上げていくことを期待している。

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