【前編】DXのうねり高まる九州 産業・暮らし 活性化に一丸 ~日経デジタルフォーラム九州 in OITA~
DX全般
地方創生
九州
2022/5/13

政府の「デジタル田園都市国家構想」の推進を受けて、デジタルトランスフォーメーション(DX)のうねりが地方へと広がり始めている。日本経済新聞社は「日経デジタルフォーラム九州 in OITA~九州からニッポンを動かす~」をオンライン方式により、大分市で開催。大分県内に加えて、九州域内の産学官がパネリストを務め、地域課題の解決のため、デザイン思考によるDXの取り組みの必要性や地方におけるデジタル人材育成の重要性などが話し合われた。
国の成長、地方から底上げ
オープニングスピーチ デジタル田園都市 国家構想担当大臣 若宮 健嗣氏

岸田内閣では新しい資本主義実現に向けた成長戦略の重要な柱として「デジタル田園都市国家構想」を掲げました。高齢化や過疎化などの課題に直面する地方にこそ、デジタル技術を活用するニーズがあります。官民連携のもと、自動配送、ドローン宅配、遠隔医療、オンライン教育、リモートワークなどにより、すべての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現します。地方の個性を生かしながら活性化を図り、地方から国全体へのボトムアップの成長で持続可能な経済社会を目指します。
構想の実現に向け4つの柱を掲げています。1つ目は5Gや光ファイバー、データセンターなどデジタル基盤の整備。2つ目はデジタル人材の育成・確保。3つ目はデジタル技術の利活用促進。4つ目が誰一人取り残されないための取り組みです。
大分県では遠隔操作ロボット「アバター」による地域課題の解決や新産業の創出など、官民一体で意欲的に取り組まれていると承知しています。これを、九州から日本全国に、そして世界へと広げていただきたいと思います。
県民中心の視点 官民で共有
大分セッション第一部 おおいたから広がる未来
大分県知事 広瀬 勝貞氏

私たち地方公共団体の目指すのは、県民の豊かな暮らしを実現させること。そして明るい未来を切り開いていくことです。県民のありたい姿をきちんとイメージしてデジタル化を手段として使っていくことが大事だと思います。どこに不便があり、どこが足りないかを議論し、ありたい姿を描くことがデザイン思考だと思います。
昨年6月にDX推進本部を設け、私が本部長としてCXOという役職に就いています。口を開けばデザイン思考、県民のためのDXを一生懸命呼びかけているところです。デザインシンキングの殿堂として有名な、スタンフォード大学のdスクールを立ち上げた、独SAPと連携協定を結んでデザイン思考の勉強をしており、この手法を活用して2022年度の施策検討・立案をしてもらっています。
暮らし、産業、行政という県政のあらゆる分野でDXを推進しています。緊急を要する新型コロナ対応でもデザイン思考でいくつかのDXに取り組みました。おおいたDX共創促進事業を通じて、中小企業とIT企業をマッチングさせて、これを横展開させていく伴走型のDXも進めていきます。
ドローンやアバターなど、先端技術で地域課題の解決を図り、これをシーズとして新しい産業を興し、デジタル人材の育成につなげる視点も大事です。ビデオ会議が当たり前となる中、人としての存在感を補完・拡充するのがアバターだと考えています。県内のデンケンという企業がアバターインの遠隔操作ロボット「newme」の製造を請け負うことになり、全国で大分県産のアバターが活躍することになると思います。
宇宙関連では、衛星データの画像と位置測定で別府湾の海洋ゴミの回収を効率化する取り組みが始まっています。人工衛星の打ち上げなどに伴う関連産業の創出にも挑戦をしており、米国の宇宙企業2社とパートナーシップを締結しています。 災害の被害リスク分析や防災教育につながるプラットフォーム「EDiSON(エジソン)」を大分大学がSAPや地域IT企業ザイナスと協力して開発しています。15時間先の災害リスクを分析できるシステムで、災害の多い国へも展開できればと思います。
未来を担う子供たちに向けて、従来の理工系STEM教育にアートのAを加えた分野横断的思考を学ぶSTEAM教育を展開しています。県下全域で、しかも民間企業も一緒になって産学官で進めています。
DXは自治体も民間も今後は必須の取り組みとなると思います。誰のため何のためのDXか。あくまでデザイン思考を忘れずに誰もが笑顔になるDXでなければならないと思います。
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