【後編】DXのうねり高まる九州 産業・暮らし 活性化に一丸 ~日経デジタルフォーラム九州 in OITA~
DX全般
地方創生
九州
2022/5/13

政府の「デジタル田園都市国家構想」の推進を受けて、デジタルトランスフォーメーション(DX)のうねりが地方へと広がり始めている。日本経済新聞社は「日経デジタルフォーラム九州 in OITA~九州からニッポンを動かす~」をオンライン方式により、大分市で開催。大分県内に加えて、九州域内の産学官がパネリストを務め、地域課題の解決のため、デザイン思考によるDXの取り組みの必要性や地方におけるデジタル人材育成の重要性などが話し合われた。
実践する人材、育成急務
オープニングスピーチ
九州セッション第一部 デジタル田園都市国家構想 加速する九州のデジタル化

(左)九州電力 上席執行役員 テクニカルソリューション統括本部 情報通信本部長 新開明彦氏
(右)NTT西日本 執行役員 九州支店長 梶原全裕氏

(左)セールスフォース・ジャパンエンタープライズ 金融&地域DX営業統括本部 常務執行役員 田村英則氏
(右)モデレーター|デロイト トーマツ グループ ボード副議長 磯俣克平氏
新開九州の発展なくして九電グループの発展なしを合言葉に、地域情報プラットフォームやドローンサービスなど、地域社会の課題解決に向け、取り組んでいます。昨年6月にQPS研究所、JAXAと小型衛星を用いた共同実証の覚書も締結しました。 梶原DXを10の分野にカテゴライズし、プロダクトを準備したり、事例を積み重ねたりしています。「LINKSPARK FUKUOKA」という課題解決に向けた場をオープンしました。企業や大学、自治体が持つ技術を掛け合わせて課題に取り組むとともに、実践的な人材育成をやりたいと思います。 田村地域にフォーカスしたのはコロナ禍になってからです。厚労省に情報を統合的に見る支援をしたことが起点となり、自治体の認識が上がりました。事業会社が自粛化でDXを意識し始めたことで、金融機関の意識も一気に高まりました。九州は地銀も非常に新しい取り組みが早く、我々もいろいろなリソースを九州にフォーカスしています。 磯俣昨年11月に九州DX推進コンソーシアムが設立されました。カーボンニュートラル地域の実装、ウェルビーイング地域の実装が検討されており、それを実現するための地域におけるデジタル人材育成も支援していきます。 新開成功体験から脱却しなければDXは容易に進まないと思います。一度、成功体験を忘れてみることがDXを一気に進める機運になるのではないかと感じています。 梶原実証実験からサービスとして提供できているものもあれば、緒に就いたばかりのものまでありますが、我々も地域の発展に貢献する企業でありたいと思っています。 田村皆様が伸びて同時に成長する。熱い思いをもって、経済の発展に寄与できるか。田園都市国家構想の一助になれば、との思いで活動しています。

参議院議員 片山さつき氏
スーパーシティとデジタル田園都市が両輪になり、デジタル基盤の整備やデジタル人材の育成をします。デジタル田園都市国家構想推進交付金には大分でも相乗りマッチングやドローンなど、たくさん手を上げていただいています。人材育成では5年間で230万人という打ち出しをしています。最新の経済対策には、必要なデジタル人材の育成確保のためのプラットフォームを構築するためにデジタルスキル標準を整備することも盛り込まれました。
健康に寄り添うまちに進化
九州セッション第二部 DXで進めるSDGs 新しい資本主義

(左)別府市長 長野恭紘氏
(右)アステム 代表取締役社長 吉村次生氏

(左)セールスフォース・ジャパン インダストリーズトランスフォーメーション事業本部 ヘルスケア・ライフサイエンス業界担当シニアマネージャー 早田和哲氏
(右)モデレーター|九州大学工学部 主幹教授 都市研究センター長 馬奈木俊介氏
長野ポストコロナを見据えて、温泉の効果を医学的に検証・発信する「免疫力日本一宣言」で、別府市は九州大学都市研究センター、別府市旅館ホテル組合連合会と包括連携協定を締結しました。ウェルネスツーリズム・ウェルビーイングを意識してさまざまな取り組みを進めています。温泉がからだにいいことを可視化するため、腸内細菌の検査を活用し、療養効果を分析しました。 吉村地域医療へのアクセスのため、異業種連携で新会社を作っています。「ブリッジ」は自治体と健康医療分野の企業の橋渡しをしています。「健康資本」は福岡県中間市と連携協定を結び、発症予防、重症化予防、介護予防の3つを基軸にプロジェクトを検討しています。 早田セールスフォース・ジャパンとして、新しい資本主義実現会議に、健康・医療のDXを進める提言をしています。ベース・レジストリなども活用した永続的な生活基盤サービスを住民に提案できないかとも提言しています。 馬奈木今後高齢化が進む中で、どういう医療課題があると思われていますか。 長野コロナにより今まで潜んでいた問題が顕在化しました。DXにより、どう解決できるのか。市民を幸せにすることは自治体の大きな目的ですが、来る人にもしっかりとコミットし、一人ひとりの健康状態や幸せに寄り添えるまちに進化できるかが課題です。 吉村自治体と医療機関の間には大きな利益相反がありますが、利害が合うのが重症化予防の取り組みだと思います。我々は市民たちに行動変容を訴えかけるための情報やノウハウを持っている企業との橋渡しができるのではないかと考えています。 早田地域住民を中心に置いてパーソナライズされた健康や医療のサービスを提供することは技術的には可能ですが、さまざまなステークホルダーを巻き込み、社会実装されなければ意味がないと思います。
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