北海道を先端地域へ DXで大胆に経済変える

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近年のICT(情報通信技術)の普及と共に、人工知能(AI)やデータサイエンスの進展と相まって進むデジタルトランスフォーメーション(DX)により、これまで広大さゆえに距離の壁に阻まれ、生産性向上、新しい価値の創出に限界があった北海道を大胆に変えようという機運が高まっている。日本経済新聞社は小樽商科大学および同校同窓会組織である緑丘会と共催で「日経デジタルフォーラム~小樽商科大学110周年記念ICTサミット~」を開催。各分野で活躍する専門家が、北海道のこれからのグランドデザインを描くヒントを語った。

ごあいさつ

小樽商科大学学長 穴沢眞氏

本学は今年で創立110周年。100周年にはITサミットを開催したが、この10年でICTは長足の進歩を遂げた。デジタル化の遅れが指摘された日本で、海外では広く普及していた遠隔授業も、コロナ禍でようやく一般化した。本学は2022年4月に北見工業大学、帯広畜産大学と法人統合して北海道国立大学機構になることを踏まえ、コロナ禍以前から遠隔授業を試みてきた。広大な北海道ではICT活用が新しい道を開くことになる。

モデレーター説明

小樽商科大学理事・副学長 江頭進氏

本学は2012年に、日本で2番目に電子地域通貨の実証実験を小樽市内で実施した。当時のネットワーク環境は貧弱でスマートフォンも普及していなかった。ところが、この10年でスマホが急速に普及。もはやネットにつながらない生活は考えられない。コロナ禍で対面、非対面の仕分けが進み、ICTの進化で地方にいても世界とつながる時代は、むしろ地方に住むことがアドバンテージとなる。その上で新たな価値を創造することが重要だ。

挑戦と実行の連続 スピードが競争力に

基調講演「ICTが拓く北海道の未来の可能性」
ダイキン工業代表取締役社長兼CEO 十河政則氏

十河政則氏

変化の激しい時代、北海道においてICTを活用し、明るい未来をつくっていくためには「世界に目を向ける」「コロナ対応でのICT活用」「中長期的視点で考える」という3点が重要だ。

「世界に目を向ける」点では、コロナ禍でオンライン会議などが一般化した。時差さえ考慮すれば距離を気にすることなく会話できる。ICTで世界がつながっていることを実感できる代表的な事例だろう。ICTをベースに世界市場を狙う企業は多い。米国発の配車サービス、ウーバーは世界各国に展開し、同様のビジネスモデルが中国などでも急成長した。ICTの進展で世界への急速な事業拡大、ビジネスモデルの世界への伝播(でんぱ)、多くの参入者による競争激化が起きている。

「コロナ対応でのICT活用」では当社でも生産・販売に関してデータの「見える化」が十分でなく、中国工場停止に始まり影響が全世界の工場に広がった。そのため直ちにサプライチェーン改革に着手した。コロナ禍で日本のICT利活用の遅れが表面化したが、課題解決は日本人の得意技。世界のICT先進国に生まれ変わることも可能だ。広大な北海道だからこそ、行政サービスのオンライン化のメリットは大きい。

「中長期的視点で考える」では、日本企業は「シン・六重苦」に覆われていると指摘される。サプライチェーン、エネルギーミックス、脱炭素、資源の確保、ESG(環境・社会・企業統治)、貿易ルールの6つの課題をチャンスと捉え、成長・発展につなげるべき。省エネ技術の空調機を普及させ温暖化ガス排出削減を両立させることは、当社の社会的使命と思っている。

チャンスを実現していくには「挑戦に次ぐ挑戦」「実行に次ぐ実行」しかない。その実行力のスピードこそ競争力の源泉となる。学生の皆さんには「出るくい」となって、明るくたくましく挑戦してほしい。心から期待している。

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