トップは明確なビジョンを 〜デジタル立国ジャパン・フォーラム③〜

目次

地政学から見たセキュリティー

トレンドマイクロ セキュリティエバンジェリスト 石原 陽平氏

米中摩擦とその影響

今や国家間の争いを見ずに、デジタルテクノロジーの動向を理解することはできない。米中摩擦は経済を武器に地政学的な国益を追求する「エコノミック・ステイトクラフト」の応酬であり、経済が武器として行使される時点で、国家安全保障は民間企業にも無関係ではなくなってきている。

繊維、半導体、インターネットなど、テクノロジーは破壊的なインパクトを市場や社会生活にもたらしてきたが、デジタルテクノロジーの開発や運用は国ではなく民間企業や研究機関が担っている。本来オープンかつ自由であるべきデジタルテクノロジーが地政学的意味を持ち始め、国家が戦略的資産と見なせば、サプライチェーンに組み込まれている民間企業もこうした覇権争いに巻き込まれる可能性が出てきている。

このためサイバーセキュリティーもいまや、技術面だけではなくビジネス戦略としての価値を持ち、データを守るという役割に加え、組織間や国家間連携の基盤としての信頼を築く役割も担い始めている。

豊かさを実現できるデジタル社会に向けて

富士通理事/Japanリージョンデジタルビジネス推進室長 山田 厳英氏

新たな顧客体験創出

電気、水道などと同様、デジタルサービスが社会インフラとなったいま、デジタルの充実度が幸せの尺度の一つになった。例えば、国連が3月に発表した世界幸福度ランキングで2位のデンマークは行政サービスの統合が進み、ワンスオンリー化で先行。デジタル化で遅れた日本は56位にとどまる。今後デジタル先進国の取り組みを熟知した上で、利用者視点を重視して全体最適を図り、様々な施策を通じて、デジタルを豊かさにつなげていくことが欠かせない。そしてデジタルとリアルを融合する社会全体のデジタルツイン化が必要である。

豊かさを幸福度から考えると、人を中心にデジタルで、行政、企業、生活者の力を結集することが重要になる。当社は従業員の意見をデータ化し、意見の重要度を瞬時に判定し経営判断につなげる「VOICEプログラム」、マイナンバーカード連携を可能にするブロックチェーン技術を応用した本人証明システムなど、多様な製品・サービスを持つ。今後も人を中心に、新たな顧客体験と仕組みづくりで貢献し続けたい。

街づくり・市民サービス向上策

日本オラクル 執行役員 クラウド営業統括 第一営業本部長 本多 充氏

課題は目的外利用の壁

政府公共機関でデータ利活用の先進事例が増えている。670統計、139万データセットを公開する統計センターでは、データ形式の国際標準化を進めている。実現すれば検索による利便性が格段に向上する。防災科学技術研究所では災害時対応の情報基盤として、形式の異なる地図情報や各種データの一元化という難題に挑戦。予測を含め、緊急時の人員配置や作業工程の策定に直結する取り組みだ。

北海道富良野市では昨年から、スマホの位置情報による除雪場所の可視化を進めてきた。業務効率化から始まり、将来的には情報を公開し、緊急車両やタクシー、バス会社なども含めた市民サービス向上につなげる。東京都三鷹市では、住民の定着率や保育施設の状況などを可視化。デジタル人材の育成も行い、データベースは全て職員だけで構築している。

こうした先進事例で共通する課題が所掌範囲。特に目的外データ利用の壁だ。データ活用の新しいルールづくりが、利便性向上の鍵を握る。

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