行政サービスをスマート化 〜デジタル立国ジャパン・フォーラム④〜

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5月にデジタル改革関連法案が成立、9月にはデジタル庁が創設される。わが国は「デジタル立国」に向けて大きく動き出した。そこで、日本経済新聞社と日経BPは、企業の経営改革や政府機関の政策転換など「新たな国づくり」について、デジタルを軸に高い視座で議論する「デジタル立国ジャパン・フォーラム」を開催。デジタルの活用で、日本の競争力を強化し、強じんな社会を構築するには何が必要か。政府担当者や専門家を集め、活発な議論を行った。

技術の恩恵 全国民に 〜デジタル立国ジャパン・フォーラム①〜 を読む
官民で新たな国づくりへ 〜デジタル立国ジャパン・フォーラム②〜 を読む
トップは明確なビジョンを 〜デジタル立国ジャパン・フォーラム③〜 を読む

国民視点でデジタル立国に臨む

(左)東京都副知事 宮坂 学氏
(右)内閣官房情報通信技術 (IT)総合戦略室 企画官 津脇 慈子氏

(左)デロイト トーマツ ファイナンシャル アドバイザリー パートナー 執行役CSO 前田 善宏氏
(右)司会:村井 純氏

冒頭でパネリストは各自の取り組みを紹介。宮坂氏は都政のQOS(サービスの質)向上を目指す「スマート東京」、前田氏は地方自治体のデジタル化支援、津脇氏は今年9月のデジタル庁創設に向けた官民混成チームによる組織づくりを説明した。

「スマートシティーは当初、デジタルシティーという捉え方だったのでは」との村井氏の問題提起に対し、前田氏は「デジタル化はあくまでベース。利用者が意識しなくても様々なサービスを一体的に受けられるのがスマートシティー(の本質)」と指摘した。

宮坂氏は「スマートシティーの主役は世界でも市区町村単位なので、悩みながら進めている」と広域自治体ならではの本音を吐露。各市区町村やデベロッパーなどと連携する重要性を強調した。

「国民視点のサービスの向上には何が必要か」との村井氏からの問いかけに対し、前田氏は「サービスを受ける側の国民との対話」、宮坂氏は「利用者の元に足を運ぶ現場主義」を挙げた。

デジタル庁の発足で行政サービスのシームレスな提供の実現に期待がかかる。津脇氏は「従来の課・室単位の縦割りではなくプロジェクト単位で動くことになる」と語った。

「日本がデジタル立国になるための条件」の問いに「誰一人取り残さないデジタル社会の実現」(津脇氏)、「デジタル化の周回遅れの現状を利用し、ベストプラクティス(最善解)の導入」(宮坂氏)とそれぞれ回答。村井氏は「デジタル立国の実現には困難が伴うが、日本は希望を持って進むべきだ」と話し、ディスカッションを締めくくった。

クラウド活用のデジタルガバメント

(左)アマゾン ウェブサービスジャパン 執行役員 岡嵜 禎氏
(右)セールスフォース・ドットコム 専務執行役員 伊藤 孝氏

(左)デロイト トーマツ コンサルティング パートナー 執行役員 大濵 憲氏
(右)司会:日経BP総合研究所 フェロー 桔梗原 富夫

本ディスカッションでは、住民のサービス向上のために電子政府(デジタルガバメント)でクラウドサービスをどう活用すればいいのかについて話し合った。

コロナ禍での国内の導入実例について、岡嵜氏は札幌市の新型コロナ対策業務支援システム、伊藤氏は全国の保健所向け業務支援システム、大濱氏は東京都福祉保健局の入院・療養調整のデジタル化をそれぞれ説明した。

各実例に共通するのは「スピード」「情報連携」「スケーラビリティー(機能拡張性)」だ。札幌市の実例では1週間程度でサービス提供までこぎつけるなど、「クラウドならではの俊敏性が大きな価値として提供できている」(岡嵜氏)という。

また、それまで紙ベースでやり取りしていた記録や属人的だったノウハウを、デジタル化によって情報連携を実現。「システムを導入した保健所では電話問い合わせをしてきた人に対し、その人の前回の問い合わせ内容を職員全員で共有・把握することでコミュニケーションがスムーズに進み、利用者の満足度向上につながっている」(伊藤氏)という。スケーラビリティーに関しては、「事務量の増大や利用範囲の拡大に対し、容易に機能を対応できる点もクラウドのメリット」(大濱氏)といえる。

今後クラウドが普及する課題として岡嵜氏は「デジタル人材の育成」、伊藤氏は「一層の官民連携」、大濱氏は「BPR(業務プロセスの再設計)による標準化」を挙げた。司会の桔梗原氏は「メディアとしてデジタルガバメント実現に向け情報発信を続けていきたい」と締めくくった。

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