人材230万人育成へ前進 〜デジタル立国ジャパン・フォーラム②〜

目次

昨年9月のデジタル庁の発足や「デジタル田園都市国家構想」の推進など、デジタル化の遅れを取り戻すため、産官学が力を合わせて日本社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいる。デジタルを意識することなく、年齢を問わず誰もが多様な幸せを追求できる「真のデジタル社会」の実現に向け、いま何をすべきか。5月23日・24日の2日間にわたって実施された「デジタル立国ジャパン・フォーラム」(主催:日本経済新聞社、日経BP)では、”誰ひとり取り残されないデジタル化〞へ、産官学の有識者が集い、デジタル立国への道筋について熱い議論が交わされた。

「デジタル原則」で社会刷新 〜デジタル立国ジャパン・フォーラム①〜 を読む
豊かさもたらす変化を 〜デジタル立国ジャパン・フォーラム③〜 を読む
知を集結、新たな国造り DX推進で幸福感向上 〜デジタル立国ジャパン・フォーラム④〜 を読む
セキュリティー 意識改革を 〜デジタル立国ジャパン・フォーラム⑤〜 を読む

一人ひとりの力を 日本の力に 〜デジタルの力で解き放とう、日本の可能性〜

個人と組織の両面を変革

Google 日本法人代表 奥山 真司氏

テクノロジーには、世界をより良くする力がある――。グーグルはこう信じ、テクノロジーによる社会課題解決を、世界共通のミッションとしてきた。これを現在の日本の状況に照らし合わせて解釈し直したのが「デジタルの力で解き放とう、日本の可能性」という行動指針だ。日本には有形無形の資産が数多く眠る。これをDXの力で呼び覚まし、イノベーションの創出に貢献したい。

それに向け、まず日本の組織をイノベーションを生む体質へと変革する。必要な要素は「個人のマインド・能力」と、それを生かす「組織のカルチャー」だ。当社はこの醸成に向けたサービスやプログラムを用意している。「グロー ウィズ グーグル」は、働く人のリスキリングを目的としたプログラムである。日本政府はデジタル田園都市国家構想の実現に向け、今後5年間で230万人のデジタル人材の育成を目標としている。同プログラムはこれに呼応するもので「ビジネス・組織のデジタル化」「キャリアアップ・スキルアップ」「教育におけるデジタル化」「インターネットの安心・安全」といったコースを用意している。

「グーグル フォー エデュケーション」は未来を担う若い世代の学びのプログラム。3つの側面から教育機関をサポートする。1つ目は教育向けクロームブックの提供、2つ目は授業の効率化を助ける「グーグル ワークスペース フォー エデュケーション」の提供、3つ目はそれらを使いこなすための研修、サポート、教材などの提供だ。同プログラムでは、児童が受け身ではなく、自分に合った形で主体的に学びを深められる工夫がなされている。

我々は性別や家庭環境、障害の有無にかかわらず、すべての人が柔軟に、生き生きと働ける多様性ある社会の実現を目指している。

例えば「ウーマン ウィル リーダーシップ プログラム」では、企業の女性リーダー育成を支援。また、視覚障害者が一人で走れるよう人工知能(AI)がサポートする「プロジェクトガイドライン」の開発にも取り組んでいる。

リスキリングとデジタル人材育成、デジタル教育

パネルディスカッション

(左)経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課課長 武尾 伸隆氏
(右)iU(情報経営イノベーション専門職大学)学長 中村 伊知哉氏

(左)SIGNATE 代表取締役社長CEO 齊藤 秀氏
(右)富士通 グローバルカスタマーサクセスビジネスグループ Manufacturing 事業本部 本部長代理 江尻 昌紀氏

〈司会〉デロイト トーマツ コンサルティング パブリックセクター 執行役員 森 修一氏

森氏が冒頭、スイスのビジネススクールIDMによる「デジタル競争力ランキング」を紹介。64の国や地域の中で、日本はデジタル競争力が28位、デジタルスキルが62位であると、改めてその遅れを訴えた。また、とりわけ地域企業がDX化に消極的であることから、討論のテーマとして地域企業のDXと、デジタル人材の育成に焦点を当てたいと語った。

1つ目のテーマは「地域中小企業におけるDXの重要性」。口火を切った武尾氏は、ストリーミングサービスの普及で街のレコード店の多くが淘汰されたことを挙げ、「このままでは地方でのビジネスが成り立たなくなる」と危機感をあらわにした。一方で、経営者次第で素早くDX化に取り組めるという地域中小企業の優位点にも言及した。

2つ目のテーマは「地域ニーズに合ったデジタル人材の育成」。中村氏は、求められるデジタル人材とは、技術的専門家ではなく「ビジネスにデジタルを使い、イノベーションを起こす人材」と発言。こうした人材は座学では育ちにくいので、大学と企業が連携し、実践のなかで育成すべきだとした。

3つ目のテーマ「地域のDXでの産官学民(市民)金(金融)の連携」については、江尻氏が北海道神恵内村での富士通の取り組みを紹介。「デジタル人材が地方に住み、行政や企業、市民の中に溶け込み、課題を見つけながら進めるDX」を解説した。

一方、中村氏は地域のDXのリーダーシップは地方大学の役目だと主張。また、齊藤氏は肩書きや立場を超えて個人がつながり、イノベーションを起こす近年の動向に注目。「彼らのエネルギーをコミュニティーがどう取り込むか」が成功の鍵だと述べた。

齊藤氏は、DXはもはや議論の段階にはなく、多くの才能が参入しやすくするために、具体的なシステムデザインを急ぐべきだと語り、各氏の賛同を得た。

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