知を集結、新たな国造り DX推進で幸福感向上 〜デジタル立国ジャパン・フォーラム④〜

目次

デジタルが変える健康・医療・介護

パネルディスカッション

(左)地方公共団体情報システム機構(J-LIS) 理事長 吉本 和彦氏
(右)厚生労働省保険局医療介護連携政策課長 水谷 忠由氏

(左)Google AI for Japan 事業開発リード 加山 博規氏
(右)〈司会〉日経BP 執行役員 SDGs事業センター長 兼 グローバル事業ユニット長 田中 祐子

高品質といわれていた日本の医療だが、新型コロナウイルスの感染拡大では弱点が露呈した。新規感染者数や空き病床数などをファクスや電話でやり取りする医療行政の姿に、国民は不安を感じた。デジタル面での立ち遅れをどう挽回するのか、識者に聞いた。

リスクは感染症対策にとどまらない。このまま状況が改善しなければ、2040年時点では就業者の5人に1人が医療・福祉分野で働かなければ需要に応えられないという。水谷氏は「こうした事態を少しでも改善するには、データを活用して医療・福祉分野の効率化を図る『データヘルス改革』が不可欠」と発言した。

現状では健康、医療、介護などのデータが分散し、相互につながっていない。水谷氏は「データを相互連携すれば①ゲノム解析による先端医療の研究開発や人工知能(AI)の活用②個々人の健康データを記録し日常生活の改善につなげる「パーソナルヘルスレコード(PHR)」③医療・介護現場での患者の過去の医療情報等の利活用④医療・介護のビッグデータを蓄積するデータベースの構築・利活用――という4分野で成果が期待できる」と強調した。

データ連携の際にカギとなるのがマイナンバーカードの保険証利用と、患者本人のオンライン認証システム。これに関しては吉本氏が「保険証利用の利便性と安全性を高めるため、J-LISはスマホでも本人確認ができるように、スマホ認証局の開発を進めている」ことを明らかにした。こうした動きに伴い、電子証明書の認証局の機能を充実させていく必要があるという。

加山氏は「グーグル検索では医療・健康に関するものも多く、ユーザーニーズは高い」としたうえで、医療・健康分野へのAI活用に積極姿勢を示した。その際に注意すべき点として、「AIモデルの作成・活用においては、作成目的や使用した学習データなどに留意し、医療体制、人種、地域などによってモデルが使えなくなるようなことがないよう、不公平性を防ぐことが重要である」と説明した。

例えば、海外データだけで作成された乳がん診断AIモデルがそのまま日本で使われた場合、誤診を招く恐れもある。グーグルは日本の医療機関との共同研究を通じ日本のデータで検証するなど、AIの不公平性をできる限り軽減することに努めているという。

サプライチェーン防衛を

トレンドマイクロ セキュリティエバンジェリスト 石原 陽平氏

現代のサプライチェーンは物的資産の移動によって成り立つネットワークを指すだけでなく、デジタルデータやクラウドなどのサービスに依存する複雑なものになった。今やデジタル資産が物的資産の価値を超えるケースも目立つ。例えば自動車産業では大手メーカーの直近投資額の約半分がソフトウエアだ。受発注管理や資材管理、取引先とのコミュニケーションもほとんどがデジタル基盤上でおこなわれる。つまりデジタルデータだけでなく、デジタルプロセスも重要で、こうした無形資産に対する脅威を想定して備えを固めるべきだ。

デジタル資産が増えれば、それを狙うサイバー攻撃も増える。しかも1つの攻撃がサプライチェーン全体に波及する。部品メーカーへの攻撃が自動車企業の操業をも止めかねない。コア部材に組み込まれるソフトが改ざんされ、サプライチェーン全体に不正プログラムが配布される恐れもある。サプライチェーンの基盤となるクラウドサービスが攻撃され、同時多発的な被害が起きることもある。

サプライチェーンの中に一つでもセキュリティーレベルが低い組織があれば、そこが攻撃される。全体のセキュリティーは最も低レベルの組織の水準に収れんしてしまう。自社がセキュリティーレベルの低い組織にならないこと、またチェーンに低レベルの組織を組み込まないこと、さらにレベルの低い状態を放置しないことが大切だ。

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