課題解決へデータ連携 〜SCI-Japan特別フォーラム②〜

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岸田政権が発足とともに掲げた「デジタル田園都市国家構想」は6月に基本方針が決まり、今後はデジタル技術を実装したスマートシティ事業が全国各地で動き出す。プロジェクトを成功に導くには、市民の暮らしやすさや幸福感といったウェルビーイングの視点が重要だ。スマートシティ・インスティテュート(SCI-Japan)が日本経済新聞社との共催により6月30日にオンライン配信で開催した特別フォーラムでは、ウェルビーイング指標に関する政策発表のほか、住民視点の町づくりに向けた自治体や企業、専門家による事例紹介やパネルディスカッションが注目を集めた。

標準化と個別性を調和

スマートシティ・インスティチュート (SCI-Japan)代表理事
東京大学大学院経済学科研究科 教授 柳川 範之氏

スマートシティは技術という道具を利用しつつ、地域の豊かさを実現させるものである。この豊かさとは金銭的、物質的なものだけでなく、自然に恵まれた住環境、健康な生活、子育てのしやすさなどを含んでいる。そこでこれを「ウェルビーイング」という言葉で表し、幸福度を測定し、目標を目指す動きが出てきた。そのための指標づくり、測定などにおいて重要なポイントが2つある。1つは地域住民の参加だ。地域住民の目だからこそ見えることがあり、知りうる情報がある。もう1つは標準化と個別性のバランスをとることだ。標準化はデータを広く活用したり比較するのに必要だが、それだけでは各自治体固有の課題や取り組みは反映されない。このフォーラムではこれを含め、多様な議論が出てくると思う。ぜひ参考にしていただきたい。

「公民連携」でヘルスケア

大阪府CIO(最高情報統括責任者)兼 スマートシティ戦略部長 坪田 知巳氏

大阪府は2025年に万博を開催する。またスーパーシティに選定され、「大阪スマートシティ戦略ver・2.0」を策定した。両方に共通するのはヘルスケアで、25年までにスマートヘルスシティの実現を目指している。しかし制度、組織、人材など多くの課題がある。解決するにはデジタル組織を独立させ、役所特有の制度やルールから解放することも選択肢である。その場合はデジタル人材の採用を民間と同じ条件にして、優秀な人を獲得できるようにする必要がある。こうした構造改革を一気に進めないと、これほどまでに遅れてしまった日本の行政デジタル化はほかの先進国に永遠に追いつけないだろう。戦略の柱は公民共同のエコシステムである。その土台として官民協議会OSPF(大阪スマートシティパートナーズフォーラム)を創設した。

ヘルスケアは万博後にも続くテーマである。データ利活用の遅れは日本がデジタル化で世界の後じんを拝した一因だが、データ連携基盤ORDENはデータ利活用のオープンプラットフォームとなるだろう。

具体策には高齢者とその課題を解決する企業を結ぶスマートシニアライフ事業、ヘルス分野の国際会議の大阪開催を目指すスマートヘルスMICE、予防・治療アプリの開発を手掛けるヘルスケア系スタートアップ支援がある。行政、民間の両方にメリットのある持続的連携を実現したい。

暮らし起点で町づくり

パナソニック オペレーショナルエクセレンス ビジネスソリューション本部 本部長
関西25・30プロジェクト事務局長 宮原 智彦氏

パナソニック・グループでは、「サスティナブル・スマートタウン」を掲げてスマートシティを手掛けている。「社会や地域の課題解決を目指し、生活する人の視点で『暮らし起点』の発想と『共創』で進化する町づくり」がコンセプト。これを考えた2010年の頃は、スマートシティには実験的イメージが強く、電力などエネルギー中心にとらえられていた。それに対し、当グループでは生活者の視点、暮らし起点の発想をし、スマートだけでなくサスティナブルにこだわって町づくりに取り組んだ。

サスティナブル・スマートタウンはこれまで神奈川県藤沢市、横浜市綱島にオープンした。そして今年、大阪府吹田市に開業した。このSuita SSTには異業種のパートナー企業15社と吹田市にもアドバイザーとして加わってもらい、官民共創の先進的な町づくりをめざす。ここには複合型商業施設、単身者共同住宅、シニア分譲マンション、ウェルネス複合施設、ファミリー分譲マンション、そして中央に交流公園を設けている。

代表的な先進サービスを紹介したい。まずカーボンニュートラルだ。関西電力の協力を得て、町の消費電力全量を再生エネルギーで賄った。もう一つはウェルネスへの取り組みである。例えば、認知機能低下の早期検知と予防・緩和のために、サービス付き高齢者住宅の中に当社のセンシング機器を設置、学研の人的ケアプログラムのノウハウと連携させて健康サポートプログラムを提供する。また興和と組み、パーソナルヘルスケアデータに基づく健康増進維持のサポートをしている。

町づくりそのものも、竹中工務店と組み、建築デザインに健康を反映させ、Suita SST健康十景という建築コードを作って設計を行った。隣接する吹田市との北大阪健康医療都市(健都)との広域連携や、LWC指標についても相談をし取り組んでいく。

また、これまでのネットワークを町づくりに活かして、2025年の大阪・関西万博や未来都市「大阪スーパーシティ」の実現など、大型プロジェクトに様々なソリューションを提供していくことを目指し、「関西25・30プロジェクト」を立ち上げ、共創により関西活性化に総力をあげて推進する。

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