課題解決へデータ連携 〜SCI-Japan特別フォーラム②〜

目次

パネルディスカッション「市民サポーター制も導入」

(左)浜松市長 鈴木 康友氏
(右)会津若松市長 室井 照平氏

(左)渋谷区 副区長CIO 澤田 伸氏
(右)慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授(SCI-Japanエグゼクティブアドバイザー) 前野 隆司氏

<モデレータ> 南雲 岳彦氏

南雲SCI-Japanが開発したウェルビーイング指標「LWC指標」を実践導入している先駆的な3自治体にお集まりいただいた。 鈴木浜松市は2021年にデジタル・スマートシティ構想を策定。市民の生活の質向上と都市の最適化を目指している。LWC指標の活用については、市民の幸福度への影響が大きく、デジタル・スマートシティ構想との親和性も高いウェルネス、カーボンニュートラル・エネルギー、交通・モビリティ、スタートアップの4分野で先行して取り組む。 室井4月にスマートシティ会津若松の推進に関する基本協定を締結。市民オプトインを起点とし、地域・市民・企業にメリットと納得感がある三方よしの社会の実現を目指す。デジタルで所得・利便性向上が図られ、デジタル企業の集積が実現すれば、市民が誇りを持てる地域になる。 澤田「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」のビジョン実現に向け、都市経営のモダン化とスマート化を進めている。「ヒト・モノ・カネ・情報」について、ウェルビーイングを追求してデジタルで最適解を作るべく実装に入る。11月には渋谷スマートシティ推進機構が発足予定だ。 前野地域生活のウェルビーイングを調査したところ、「ダイナミズムと誇り」「生活の利便性」「生活ルールの秩序」などが幸せとの相関係数が高かった。幸せの測定には客観指標と主観指標があるが、熱気や活気、本気がないと住民の主観指標は上がらない。熱気のある町づくりで日本の模範になってほしい。 南雲どういった幸せの因子を大切にしたいか。 鈴木LWC指標から見た浜松市の特徴は、家族や地域社会のつながりが強い点だ。共助型の仕組みでサスティナブルな地域社会を構築し、市民のウェルビーイングを高めていきたい。 室井市民に「やってよかった」と言われる結果を出すことが大事だ。スマートシティ・サポーター制度を構築して、市民に感じ、学び、体験してもらい成果を共有していく。 澤田ソーシャルキャピタル(社会関係資本)は渋谷区の大きな強み。人と人が縦横につながる、対等でフラットな町がウェルビーイングになったらよい。 前野やりがいとつながりがあり、皆で力を合わせることができれば、日本中の都市に幸せな市民をつくることができる。自治体には大いに期待する。

パネルディスカッション「生活者の意見募り反映」

(左)東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授 柏の葉アーバンデザインセンター長 (SCI-Japanエグゼクティブアドバイザー) 出口 敦氏
(右)三井不動産 柏の葉データプラットフォームプロジェクト責任者 竹川 励氏

(左)NTTデータ 第二公共事業本部 ヘルスケア事業部 課長 湊 章枝氏
(右)<モデレータ> 南雲 岳彦氏

南雲住民視点のスマートシティの実現について話を伺いたい。 出口都市OSの導入が各地で進められているが、スマートシティのシステムと住民との間の乖離(かいり)が懸念されている。この課題に対してわれわれが研究しているのは、多様な住民・市民の満足度の把握と評価をする「QoL評価」や、住民参加を進めて生活の場で共に研究・実験・実証する「リビングラボ」の仕組みづくりだ。 竹川7月に開業した千葉県柏市の「三井ガーデンホテル柏の葉パークサイド」は、病院連携型ホテルとして国立がん研究センター東病院とサービスを共同開発した。患者会に患者視点で話を聞き、初めて気づくこともあった。生活者視点でサービス開発してこそ、データプラットフォームが生きてくると思う。 当社はクラウド型の健康管理ソリューション「Health Data Bank(ヘルスデータバンク)」を運用。健康データと様々な業界・企業が持つデータを融合し、生活者起点の新サービス創出を行う。柏の葉スマートシティでもヘルスデータバンクを提供しており、病院連携型ホテルでは患者の状態を適切に把握してより良い治療につなげることが期待されている。 南雲柏の葉スマートシティが産官学民連携できたポイントは何か。 出口地域のまちづくりの中心的な組織である柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)の存在があげられる。UDCKは駅前に立地しておりガラス張りで、住民が入りやすい環境だ。住民の積極的参加を促すこと、およびそのための複数の方法を地域が持っていることが非常に重要だ。 UDCKを中心に生活者の意見やニーズが反映されたアイデアがどんどん生まれ、町づくりに参画する大学や企業が連携して主体的に実現しようという流れができていて魅力的だ。ITコンシェルジュがデジタルと地域住民をつないでいる役割も非常に大きい。アカデミアとしっかり連携してサービス開発できることも企業にとってはありがたい。 竹川やはり住民視点が大切だ。誰に対して価値をつくり、どうしたいのかが重要だが、住民に対する価値提供に最終目標を置くと、公民学のベクトルが同じ方向を向きやすくなる。柏の葉で開発された価値が全国を豊かにするということを今後も実証していきたい。

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